学校再開後の生活科授業で大切にしたいこと② スタートカリキュラムはどうする !?

この4月から全面実施となっていた新しい小学校学習指導要領では、「第1章 総則」の中に「第2の4 学校段階等間の接続」が新設されました。このことはスタートカリキュラムの「義務化」とも言われ、日本全国の全ての小学校において、スタートカリキュラムは編成・実施しなければならないものとなったのです。その実施に向けて、昨年度末に力を入れて編成に取り組んだ学校も多かったのではないでしょうか。

学校が再開するにあたり、1年生のスタートカリキュラムをどうするかというのは小さくない問題です。しかし、せっかく作ったスタートカリキュラムだからといって、「どうしたらこれを使えるかな?」と考えるのは子どもの目線に立っているとは言えないような気がします。スタートカリキュラムは、小学校へ入学した子どもが主体的に自己を発揮し、新しい学校生活を創り出していくためのものです。今年の新1年生にとっても、「小学校生活のスタート」であることは変わりありませんが、臨時休業によって例年とは違う状況にあるのも事実です。それを踏まえてスタートカリキュラムを見直すことが必要です。今の1年生の心境と私たち教員が願う1年生が育つ姿の両面から考えたときに、今年度特有の「小1プロブレム」とその解決策としては次の三つだと思いました。

1.「学校は受け身で勉強する場所」という思い込みを是正する

入学期の1年生は、学校は国語や算数を教えてもらうところといった学校イメージをもっている場合が多いと思います。だからこそスタートカリキュラムを通して、園と同じように安心して自己発揮しながら学びに向かい、自分たちの学びや生活を自分たちで創り出すことができるように、「学校は、そうじゃないんだよ!」と伝えていく必要があります。

特に今年度は、与えられた課題に個別に取り組むところから学校生活が始まってしまい、学校への思い込みが強化されてしまっている可能性があります。私たちとしては急ぎたい気持ちや焦る気持ちもありますが、このような思い込みがあることに留意し、一つ一つの活動において子どもたちと丁寧に話し合い、考えをまとめたり、納得して理解したりできるようにする必要があります。

2.新しい友達を作ることができるようにする

1年生の子どもたちやその保護者がもっとも不安に思っていることの一つが、新しい友達がすぐにできるかということです。「うちの子は休み時間に誰と遊んでいますか?」と最初の個人面談や家庭訪問で質問された経験のある先生方も多いはずです。4月に入学式を実施できた学校であっても、その日のうちに新しい友達関係を築くことはほぼ不可能だったことと思います。とりわけ、ある園からある学校に一人で入学している子は、友達が一人もいないまま臨時休業に突入してしまいました。さらに今後はマスクを付けての学校生活で、名前と顔がなかなか一致させられないという心配もあります。

学校再開後は、三密を避けつつも友達と関わったり、友達のことを知ったりする活動を各教科等の中で積極的に取り入れ、新しい友達関係をスムーズに築けるようにしていくことが大切です。また、個人情報の保護には十分留意しながら、マスクをとった顔が分かる写真を使って掲示物等を作ることも考えられます。

3.時間の区切りを付けながら学習や生活に取り組めるようにする

幼稚園・保育所・認定こども園等で緩やかな時間の区切りの中で生活してきた新入生に対し、スタートカリキュラムを通して、三~四つの「〇〇タイム」から各教科等の時間割へと移行する取組も、近年多く行われてきました。しかし今年度は約2か月もの間、家庭で生活することになり、どのような時間の区切りで一日の生活を送ってきたのかは一人一人かなり違っていると思われます。

学校再開後は、他学年のチャイム等にとらわれることなく、1年生の実態に合わせて弾力的に時間の区切りを設定し、1学期の終わりにかけて通常の時間割の生活に移行していくことを考えていく必要があります。

 

松村英治(まつむら・えいじ)

大田区立松仙小学校主任教諭。平成24年度より東京都公立小学校勤務。

生活科やスタートカリキュラムの充実を目ざし、全国に向けてさまざまな実践提案を行うほか、研修講師なども多数務めている。
著書に、『学びに向かって突き進む! 1年生を育てる』(東洋館出版社)、『育ちと学びを豊かにつなぐ 小学1年 スタートカリキュラム&活動アイデア』(明治図書出版/共著)などがある。
「発達や学びをつなぐスタートカリキュラム」(文部科学省・国立教育政策研究所 編著)作成協力者、「評価規準、評価方法等の工夫改善に関する調査研究(令和元年・生活科)」協力者などを務める。光村図書『せいかつ』教科書編集委員。


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