リモート授業、どう行うの?【第4回】 対面授業の中で生かす

2020年9月1日公開

北海道教育大学附属釧路中学校教諭 更科結希

第3回では、中学3年生の最初の題材「メッセージを持ち歩く」のリモートでの鑑賞授業の様子をご紹介しました。今回は、リモート授業の経験を生かし、現在の対面授業の中で工夫している学習の流れやタブレット端末の活用などについてご紹介しようと思います。

臨時休業明けの対面授業

休業明け、生徒たちが元気に登校しました。1年生は美術室の使い方や授業の進め方について改めて説明するところからスタートしました。2・3年生の生徒たちとは、対面授業のよさを互いに実感しました。それは、教師が一人一人の表情を見て支援ができること、生徒が素材や道具で示しながら質問できることなど、同じ空間にいるからこそ体感できる対話でした。

授業は、各学年すでにリモートで進んでいたため続きから行いましたが、特に混乱はありませんでした。さまざまな素材を扱い、思い切って表現活動ができるように準備をしました。

リモート授業で見いだした効果

約1か月間のリモート授業を経験し、対面授業の中でも継続して取り入れたい要素はいくつもありました。その中には、タブレット端末を活用することだけでなく、授業改善につなげられることも多くありました。以下は、リモート授業を経験し、今後の対面授業に生かそうと考えたことです。

  1. アプリケーションを利用して、生徒個人の考えを即時に集約し、可視化すること
  2. タブレット端末を活用し、学習の蓄積や調査、表現する手段の幅を増やすこと
  3. 生徒の環境や状況を踏まえた上で、学習課題や活動を考えること
  4. 対面授業を行う際には、学校環境を有効に活用した、対面だからこそ取り組める活動を充実させること

こうした点を取り入れ現在、授業改善に取り組んでいるところです。

リモート授業の効果を生かす取り組み

ここでご紹介するのは、対面授業の中で実施している、中学1年生の表現題材「身近な情景に潜むカメレオン」です。この題材では、身近な情景を、全体や部分など、造形的な視点で捉え表現することをねらいとしました。校内の気になる風景にカメレオンを潜ませるため、その場所と同じ色をつくってカメレオンの形をした紙に着色するという内容です。

この学習では、1年生にとってまだなじみがない校舎へと目を向けさせ、実感的に色彩を学ばせることに焦点を当てました。上記にあげた(1)(2)に関しては、子どもたちの考えや状況を把握する上で活用し、(3)(4)については、十分ではありませんが「~をつくろう」「~を描こう」といった導入ではない学習活動の在り方について検討しながら構成しました。

ご紹介する導入では、資料の比較から造形的な視点に着目し、今回の学習で大切にしたいことを考えさせる場面を設けました。また、生徒が校内を探索する場面で、ビデオ会議ツールZoomに接続した機器を用いて撮影することを取り入れるなど、対面授業だからこそできる内容にリモートでのノウハウを組み合わせました。下に指導案をご紹介します。(青字部分がリモートのノウハウを生かした部分です)

「身近な情景に潜むカメレオン」(全4時間)第1時の指導案

更なる授業改善を目指して

リモート授業を始めるにあたり、不安が大きかったのは事実ですが、実際に取り組んでみて授業のあり方を再確認する機会となったことは、とても不思議な気分です。本校は現在も月に一度リモート授業を行って、リモート環境における授業の在り方やスキルアップを研修しています。今後、GIGAスクール構想など、タブレット機器が文房具として扱われる時代を見据え、更なる授業改善をしながら実践を積んでいきたいと考えています。

本連載は、今回が最終回です。ご愛読、ありがとうございました。

更科 結希(さらしな・ゆき)

北海道生まれ。北海道教育大学附属釧路中学校教諭。北海道教育大学卒業後、北海道釧路町の公立中学校教諭を経て、2012年4月より現職。北海道教育大学大学院修了。現在、研究主題「創造活動の価値を見出すことができる児童・生徒の育成」の実現に向けて、日々授業研究を行っている。


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