マスク越しでも、ディスタンスをとっても、笑顔の交流! 〜「動き」のある授業で実現〜(1) ディスタンスが求められる今こそ、心の交流を

2020年7月10日公開

札幌市立あやめ野中学校教諭 近野秀樹

6月から部分的に、15日からは本格的に授業が再開された札幌市。本校でも、2月中旬から5月末までの深刻なコロナ禍の影響で、心身共に活力を失ったように見えた生徒たちが少なからずいたが、7月になった現在、少しずつ本来の元気な姿が見られるようになってきた。「新しい生活様式」の中であっても、道徳科での「『動き』のある授業」(※1)が、本来の道徳科のねらいを超え、生徒たちが元気を取り戻すのに大きな役割を果たしていると感じ、驚きを感じている。

本校では、平成26年度から道徳教育、ならびに道徳の時間の充実を学校教育の柱として掲げ、職員一体となった研修をし、生徒たちと共に考える授業を大切にしてきた。中学校で道徳科が実施となった昨年度からも、教科書を活用しながらねらいに迫るための授業を、各学年で悩みながら、種々の工夫を続けているところである。その中でも全校で共通理解のもと、活用を重ねているのが「『動き』のある授業」である。

全校で本格的に「『動き』のある授業」の研修を行い、授業に取り組んだところ、生徒からは「実際にせりふや動作を再現してみたら、思ったよりも考えが広がって、みんなもいろいろな意見が出て、考えやすかった」「ホワイトボードで交流すると、一部の人ではなくみんなの意見がわかって楽しいし、みんなの考えの良いところがわかった」などの意見が多数届き、異動で職員が半分近く入れ替わった今年度も、その効果を継続するため、新年度の準備段階から研修を深めていた。

そんな折、御存知の通りコロナウイルス感染症の拡大が猛威をふるった。北海道では2月から第1波、道独自の緊急事態宣言の効果もあり、一旦封じ込めに成功したかに見えたが、宣言解除後の4月から第2波が我々を襲った。

なんとか保護者・在校生が不在ながらも卒業式・入学式を行ったが、4月13日を最後に長期間の休校・自粛生活が始まった。6月1日から少人数・短時間での登校が再開し、同15日から、活動内容に種々の制限付きではあるものの、いつもの6時間日課や部活動、委員会活動などが再開された。7月となった現在では北海道・札幌市の新規感染者数は以前に比べかなり減ってきたように見えるが、札幌市内及び近郊でもクラスターが続き、第3波の到来に不安を抱えながらも、なんとか教育活動を行っているところである。

本校では札幌市教委の例示を参考に、道徳科の授業時数を各教科と同等の「1割減」に留め、年間32時間の実施計画を立て直した。「受験もあるし、各教科の授業が優先で、道徳科はもっと少なくて良いのでは」などの意見もありそうなものだが、実際は校内ではそういった意見が聞こえないばかりではなく、話題にすら上がらなかった。教師も生徒も、フィジカル・ディスタンスが求められ人間どうしのあたたかい触れ合いが制限される中、せめて心の交流を、という思いがあるのだろう。

※1 平成29年から令和元年に行われた日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会、日本道徳科教育学会で、磯部一雄・杉中康平・近野秀樹が発表した授業方法。「場面の再現化」やホワイトボード・マグネットを活用した「対話・交流」によって、生徒の「心」を動かす、主体的・対話的な授業。


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