マスク越しでも、ディスタンスをとっても、笑顔の交流! 〜「動き」のある授業で実現〜(2) 3密を避けながら、授業を深める

2020年7月15日公開

札幌市立あやめ野中学校教諭 近野秀樹

6月中旬より通常に近い日課が再開されたとはいえ、「3密」を避けるための種々の制限や工夫、施設・用具の消毒などが前提である。道徳科の授業も例外ではない。学級での道徳科授業は対話が重要だが、交流のために机をつけたり、向かい合って会話したりといった学習活動は禁じられている。しかし、本校では下の写真のように、「マスクを付けて、ディスタンスをとって」も笑顔で、心のふれあいを感じる場面が見られている。

本校で取り入れている「『動き』のある授業」は、以下の2種類である。

 

「動きⅠ」 … 教材の場面を再現化する「動き」。登場人物への自我関与を深めることをねらいとして、「役割演技」や「動作化」等の手法を用いて、教材の場面を再現化する活動。

「動きⅡ」 … 対話し、交流し、多面的多角的に考える「動き」。生徒が「自己を見つめ」「多面的・多角的に考える」ことをねらいとして、一人一つの小型ホワイトボードとマグネットを活用した対話・交流をする活動。

その中でも、現在の状況では、教師と生徒、生徒どうしの身体的な距離の近さや接触が生まれる可能性のある演技や動作化は諦めざるをえない。また、全員が自分のホワイトボードを黒板に貼りに行く際や、全員のホワイトボードを読むとき、共感した意見、詳しく聞きたい意見に磁石を貼る動きでも密集が生まれてしまう。

そこで、本校では以下のような工夫を行った。

(1) 中心となる問いに対する考えを、今まで同様に、一人一つのホワイトボードに書くが、貼るのは教師が行う。
(2) 友達の意見に対する相互評価のマグネットは貼りに行かない。
(3) 黒板の近くに読みに行かず、教師が全員分の意見を読んで紹介する。
(4) 「場面の再現化」では、生徒が距離を保ったまま行える動きに限定する。
(5) ホワイトボードやマーカーの共有を避けるために、出席番号を記入し、教室内で個人管理とする。

実際に数回授業を行ってみると、「『動き』のある授業」に慣れている上級生も含め、生徒、教師双方とも、それほど違和感なく教材の場面や登場人物の生き方に入り込み、楽しく笑顔で考える授業となった。むしろ、未曾有の事態を通し、物事を本質から考え直したり、捉え直したりする日々を送った経験から、今までより広い視野から幅広い意見と対話が生まれていると感じている。

3年生は、再開してから最初の道徳科が、入試形式の学力テストを終えたあとの6時間目に設定されており、テスト勉強の睡眠不足やテストの疲れが予想された。しかしどのクラスも活発に、たいへん意欲的に「動き」、そして仲間との対話を楽しんでいる様子が見られた。マスク越しではあるが、笑顔でお互いを認め合うことで、自粛という名の「締め付け」を余儀なくされた心が、少しずつ解放されていくようにも見えた。


掲載された記事および画像の無断転載を禁じます。