Withコロナ時代に英語力を伸ばすための「家庭学習」のポイント 【第1回】

2020年6月10日公開

広島県福山市立福山中・高等学校教諭  上山晋平

新型コロナの影響により、新しい生活様式(「3密を避ける」など)への対応が必要になっています。そんな中、「生徒の英語力をどうやって伸ばしていけばいいんだろう」と不安に思われている先生方も多いと思います。授業の遅れについては、授業以外の場(おもに家庭)での学習も求められていますが、生徒の自主性や学習習慣がなければ成り立つものではありません。

そこで本稿では、Withコロナの時代においても英語力(4技能・5領域)を伸ばすための「家庭学習」の進め方について、3回シリーズでお伝えいたします。

第1回 「定着」を促す ~「単語」「文法・表現」「音読」のやり方~

第2回 「準備」を促す ~「授業での発表」と「検定(や入試)」に向けて~

第3回 「真の実力」を伸ばす ~「ネット・アプリ学習」と「好きなこと」を続ける~


第1回 「定着」を促す ~「単語」「文法・表現」「音読」のやり方~

今回は、次の3つを扱います。

  1. 単語(教科書・単語帳)
  2. 文法・表現(演習)
  3. 音読

一つずつ順に見ていきましょう。

1. 単語(教科書・単語帳)

英単語が覚えられなくて困っている生徒は多いかもしれません。そこでまずは次のように、記憶に関する話をしてみます。

・記憶は、「印象の強さ」(インパクト)と「反復回数」(繰り返し)に比例する。

「一夜漬けのテスト勉強」だと、学んだ内容をすぐに忘れてしまうのはこのため。

・テスト前日や当日だけでなく、1週間で3回は触れることを心がける(1か月で6回)。

短期間で繰り返し触れることが記憶定着のポイント。

・いろんな「感覚」を使って覚えると忘れにくくなる。

「目」だけでなく、「耳」(音声)と「口」(発声)と「手」(動き)を使って練習すると、思い出す手がかりが増える。

次のような具体的な学習法も提示してあげるとよいでしょう。

◆発音やアクセントに気をつけて発音する。

スピーキングとリスニングの力がアップする。

◆ノートに「発音しながら」自分が覚えるまで書く(「音読筆写」とよぶ)。

 

「音読筆写」プラス「自己テスト」のやり方

(1)ノートに、覚えたい単語を正しく書く。

(2)その単語を音読しながら、素早く5回書く。

※完璧に言えて書けるものは1~2回の確認程度でもOK。

(3)書き終えたら、何も見ないでその単語をそらで言ってみる。

(4)自己テスト(1回書いて、答え合わせ)。

※練習と自己テストをセットにすることが大切です。

画像、音読筆写ノート例

音読筆写(青囲み部分)と自己テスト(赤囲み部分)のノート例。
ノートに書く順番は、左端(日本語)→右半分(音読筆写)、最後に中央(自己テスト)。

※ボールペンを使って書くのもオススメです(芯が減らずに書きやすく、さらにインクがなくなったペンを貯めると達成感につながります)。

2. 文法・表現(演習)

単語の次は、教科書の「文法」や「熟語」などの覚えておきたい表現の定着です。以下のようなポイントを、生徒と共有したいと思います。

◆授業で習ったその日に復習すると知識が定着しやすい。

人は1日で約7割忘れるが、忘れる前に復習すると定着率が上がる。

◆「文字練習」の後は、「音声練習」をする。

問題を解くだけでなく、解いたらその英文を「読む」、日本語を見てすぐに英語を「言う」など音声でも学習することで、話したり聞いたりするときにも使える英語力が身につく。

これらのことを、教科書準拠のワークブックやドリルなどを使って実践するとよいでしょう。

画像、ワークブック紙面

『COLUMBUS 21』完全準拠 ワークブック
授業で習った語法や文法をその日のうちに確認。「文字」で解くだけで終わらずに、そのあとに音読したり見ないで言ってみたりする「音声化」を促してみてください。

3. 音読

「単語」「文法」の後は、「音読」です。この3つが英語力の基礎に当たるものです。音読ではまず、次の心構えを生徒と共有しておきましょう。

・英語力は、覚えたものを使ってみることで伸びていく。

覚えるだけでは不十分。インプットとアウトプットの両方が大切。

・覚える際は、「意味と形(構造)」を理解していること」が大切。

丸暗記では、他の場面で応用できない。

つまり、意味や形を理解したうえで、音読してみて、できるだけそれを他の場面で使ってみることが大切だということです。

これらを促す音読の方法にはいろんなものがありますが、私が特に生徒に家庭で取り組んでほしいと考えているのは、次のようなことです。

  1. まずはトライ:教科書本文を自分で音読してみる。
  2. 理解:意味が分からない箇所があれば調べたり、聞いたりして解決する。
  3. 発音:CD(あれば)の発音を正しくまねる(英語は「モノマネ」が大切)。
  4. リズム:CDと「同時読み」をする(発音・スピード・抑揚を「まねる」)。
  5. 通訳:日本語(訳)を見て、それを瞬間的に英語に直す(通訳の訓練)。
  6. 生み出す:本文を何も見ないでリテリングしてみる。

*  *  *  *  *  *

いかがだったでしょうか。もっと詳しく知りたい方は、以下もご参照ください。

『45の技で自学力をアップする! 英語家庭学習指導ガイドブック』上山晋平 著(明治図書)

次回は、「授業での発表」と「検定(や入試)」に向けて、家庭でどのような準備を促すとよいのか、お伝えいたします。

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