iPadを活用して詩歌を作ろう~withコロナとGIGAスクール構想を見据えた授業デザイン~②

2020年10月1日公開

上越教育大学附属中学校教諭 岩舩尚貴

2年生「短歌を創作して『いいね』を送り合おう」(7月実践)

分散登校を経て、ようやく5月下旬に通常の授業が再開されましたが、今までのように机を向かい合わせて、話し合うといった授業はなかなかできません。ICTがあるからこそできる3密を避けた「新しい授業スタイル」をとにかく模索する日々でした。

そのような中で、2年生では、教科書教材「新しい短歌のために」(2年P.64)で短歌の基礎知識や鑑賞の仕方を学んだ後に、以下のような創作活動を行いました。

  1. 心にとまった風物の写真を撮る
  2. 短歌の題材を決定する
  3. 短歌を創作する
  4. 創作した短歌を教育用SNS「Edmodo」に投稿する
  5. 仲間の短歌を鑑賞し、コメントや「いいね」を送り合う

(1)心にとまった風物の写真を撮る

学校周辺を散策しながらiPadのカメラで短歌の材料となる写真を撮ってくる活動を位置付けました。梅雨の時期の活動でしたが、紫陽花や蓮など季節の植物をはじめ、生徒たちは心にとまった風物の写真を様々なアングルから撮っていました。

(2)短歌の題材を決定する

ロイロノート・スクールのシンキングツールを使い、撮った写真の中から短歌の題材を決定していきました。まずは、撮った写真を「ウェビング」のシート上に並べます(思考拡散)。次に「ツールを切り替え」機能を使い、「ダイアモンドランキング」にシンキングツールを切り替え、撮った写真を順序づけていきます(思考収束)。

「ウェビング」による題材候補の可視化(思考拡散)

「ダイアモンドランキング」による順序づけ(思考収束)

(3)短歌を創作する

次は撮った写真の情景から言葉を生み出していく活動です。ロイロノート・スクールのシンキングツール「クラゲチャート」を使い、短歌で表現したい(伝えたい)ことを可視化する活動を位置付けました。表現したいことが決まったら、国語辞典や類語辞典(ネット検索も可)などを使いながら五音と七音を組み合わせて短歌を創作していきました。

(4)創作した短歌を教育用SNS「Edmodo」に投稿する

創作した短歌はクラスメイトのみが閲覧できる教育用SNS「Edmodo」に投稿します。このSNSは例えば実験記録や学習の振返りといったように、学びの履歴として国語以外の教科でも使われています。仲間の短歌が写真とともに一覧になるので、投稿されるたびに生徒たちは食い入るように仲間の短歌を読んでいました。

(5)仲間の短歌を鑑賞し、コメントや「いいね」を送り合う

Edmodoに投稿された仲間の短歌に対し、コメントを書いたり、「いいね」ボタンを押したりしながら、短歌を鑑賞しました。仲間からコメントをもらいながら、短歌を推敲し、再投稿する生徒もいました。

子どもたちにとってSNSの中で自分の写真や短歌が評価されて「いいね」をもらえることは大きなモチベーションになるようです。教育用SNSによる短歌鑑賞は生徒同士が楽しみながら活動できることに加え、「いいね」やコメントといった新たな相互評価の可能性を秘めていると感じています。

おわりに

今回のコロナ禍における休校、分散登校、そして「新しい生活様式」といった考え方の広まりは、これまでの授業スタイルを大きく変えるものであり、暗中模索の中で試行実行を繰り返してきました。そんな中で子どもたちの「学びを止めない」ためのツールとしてiPadの活用は欠かせないものでした。休校中、子どもたちは仲間と会えない寂しさや、新しいクラスメイトと始まる学校生活への期待感や不安感の中で一人悶々と過ごしていたことでしょう。しかし、テクノロジーを駆使して創造性溢れる詩を作り、それらを仲間と紹介し合うことによって、「言葉」によるつながりを実感することができたのではないでしょうか。これからもiPadを有効活用して学習者主体の国語授業をデザインしていきたいと思っています。


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