ICT を活用したコミュニケーション支援② 習うより慣れる

ICT を活用したコミュニケーション支援
第2回 習うより慣れる

2020年10月16日公開

前 香川県小豆島町立苗羽小学校長 川井 文代

変化のスピード

私は携帯を電話とメールだけで使っていた。スマートフォンに変えた時、娘に「私と同じ会社のものにしてね、使い方を教えるから。」と言われたぐらいだ。娘は、SNSやアプリを使いこなしていた。家族旅行をすると、電車を検索し、どの電車の何号車あたりに乗ると乗り換えがスムーズかを調べ、結果、予定より一本早い新幹線に乗れたこともある。新幹線の予約も直前まで変更できることに驚いた。
数年前までは、学校現場では会議にパソコンを持ち込んでいる人はほとんどいなかった。先輩教師から、「パソコンで他事をしているのでは」と注意された人もいた。今では、パソコンを持ち込んでの会議は当たり前。大学では携帯で授業の記録をとるのも日常的だ。「パソコンができない」では、ほとんどの仕事で通用しない。
私自身も、検索、予約、買い物、記録……少しずつ便利な機能をスマートフォンに入れて活用している。子供たちも、パソコンやスマートフォンを使ってのゲーム、検索、動画視聴等で馴染みがある場合が多い。

習うより慣れる

小学校の中ではどうだろうか。新型コロナウイルスの蔓延でリモート授業、一人一台タブレット支給等が報道されていたが、まだまだ足ぶみをしてはいないだろうか。
先述の研究を始めたころ、通信作成や学習に使えそうなアプリを探す等は、チームの若年教師が率先して推進していた。研究推進の中心教師はICTに不慣れであったが、1年もすれば、手慣れたものになった。「若い人に教えてもらいながらやっているうちに、どんどんできるようになりました」と笑っていた。(その活用方法については、先輩教師のアドバイスが生きていた。) この分野は、若手や子供達の方が詳しく、スキルも高いことが多い。
そこで、通常学級にタブレットを置いておき、自由に使えるようにしておいた。すると、自然と子供たち同士で教え合い、使えるようになっていった。カリキュラムを作成し、モラルを含めて計画的に指導していくことも大切だが、使い慣れることの方が大切であると実感した。

現在、Society5.0(仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会)、AI(人工知能)等、ICTを取り巻く世界は日々大きく変わっている。日本の子供はゲーム中心にICTを活用しているが、諸外国では学習場面での使用が中心だと報道されていた。学びやコミュニケーションの道具としてICTを活用できる子供を育てる授業を日常的に行うことが求められている。ICT機器を使いこなして、主体的で対話的で深い学びができることが望ましい。というより、必須なのである。
教師自身のICTの指導力育成は重要であるが、難しいことを考えすぎず、とりあえずやってみる、やり続けるべきである。子供たちに教えてもらいながらでもよい。その中で、少しずつ慣れていけばよいのだ。後回しにしてはいけない。子供たちはICTを使いこなす世界で生きていくのだから。


 

川井文代(かわい・ふみよ)

元小学校校長、前香川県小学校教育研究会国語部会長

パナソニック教育助成校として、感情コントロールアプリの教育実践など、ICT教育に携わる。自尊意識を高める学校教育の在り方や、 アクティブ・ラーニングの授業の研究・実践を行う。

Illustration: ひこ

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