オンライン学習で見えたこと ――「ふきのとう」「たんぽぽの ちえ」の実践を通して ②

2020年6月18日公開

Teamsを活用した「日記」や「おすすめの本紹介」の学習で、手応えを感じた大村先生と子どもたち。いよいよ「ふきのとう」の学習に取り組み始めました。

――「ふきのとう」の学習は、どのように始めましたか。

最初は、教科書を読んで、ワークシートに3・4行の感想を書くという課題を出しました。「ふきのとう」は、場面や登場人物ごとに読み進めることができる教材ですので、おおまかに、登場人物についての感想、場面についての感想という観点でまとめられるだろう、そこから課題を作ることができるだろうという見通しはもっていました。

――子どもたちの反応に、教室での学習との違いはありましたか。

次々に投稿された感想は、教室で学ぶときと変わりませんでした。その感想を、場面ごとや登場人物ごとなどの観点でわけて、学習課題を作成しました。
中には、「最初は暗いお話だったけど、最後はハッピーな気持ちになった」など、場面の変化や違いを捉えたり、「はるかぜ」や「おひさま」に注目するなど、キーマンやターニングポイントを捉えたりしている感想もありました。そういった感想を要所要所に入れるようにしましたが、子どもたちのプリントからそれを読み取るのはなかなか難しいとも感じました。教室であれば、子どもたちとのやりとりを通して、もっと深められたかもしれないと思うところはあります。
こうして作成した学習課題から、子どもたちに挑戦してみたい課題を選んで取り組ませることにしました。

子どもたちの感想をまとめ、そこから七つの学習課題を作成した。

――子どもたちの課題提出の状況はいかがでしたか。

それぞれが課題を1つ決めて、ノートに丁寧に視写をし、書き込みをしたり、考えを書いたりして、投稿してくれました。取り組み方がとても丁寧で驚きました。全部の課題に取り組んだ子もいました。このあたりから子どもが学びにどんどんと乗ってきました。自分の考えがプリントに位置づいているということが喜びや充足感につながり、一歩踏み込んだ学習が展開できるということに気づいたのかもしれません。

――学習課題に取り組んだ子どもたちには、どのように返していかれましたか。

第2次の投稿では、子どもたちどうしをつなげることを意識しました。「この課題、〇〇さんも取り組んでいたよ。」や、音読の工夫を書いた子に、「別のこんな工夫もあったよ。」と紹介するなど、子どもどうしをつなげ、考えさせる場面を作りました。

――コメントを一人ひとり返していくのは、かなり時間がかかるのではないでしょうか。

私たち教師は、普段、ノートにコメントを書いています。その感覚と同じですね。普段からやっていることを、入力するだけ。Teamsですと、書いたことが全部残るので、前に何を書いていたかがすぐにわかります。コメントを入力する大変さよりも、コメントを見返すことができる効果の方を強く感じました。

――学習課題への取り組みの状況は、子どもによってさまざまかと思います。どのようにクラス全体の学びを高めていったのでしょうか。

Teamsは、子どもと教師のやりとりが全員に共有されるので、子どもたちは、投稿された作品と、私のコメントをセットで読むことができます。私が子どもたちの作品のいいところを褒めることで、他の子どもたちもそれを読んで、「こうしたらいいんだな」と気づき、考えることができます。常にクラスの友達みんなのノートを見ることができるというのが、教室での学びにはない良さかもしれません。
第2次で投稿された子どもたちの学習成果をまとめ、「ふきのとう――2くみバージョン」を作成しました。

完成した「ふきのとう―2くみバージョン―」

――「ふきのとう」の学習で、特に手応えを感じられたのはどんなことでしょうか。

第3次の「台本を読み、音読をして感想を書く」という学習に広がりがあり、とてもおもしろいと感じました。最後まとめの感想を、物語の内容についてと、学習の仕方について書きましょうと投げかけたのですが、子どもたちからは次のような投稿がありました。

  • お友だちとべんきょうをして、自然の中で、こんなにかわいい会話や役割があるということを初めて知り、私はとてもフワーとしたやさしい気もちになりました。
  • 「ふきのとう2くみバージョン」ができて、うれしく、とてもたのしかったです。つづきばなしをくわえて読むと、もっともっと春がかんじられて、とてもいい話になっていました。
  • みんなのいけんがあわさって、とてもよいものがたりになりました。学校で、音読のげきをしてみたいです。

内容についての読みの深まりも見られましたし、友だちとの学び合いや「ふきのとう2組バージョン」を作ったという言語活動について肯定的な感想もたくさん見られました。また、工藤直子さんに手紙を書いた子がいたり、工藤直子さんの「のはらうた」を読む子がいたり、音読劇を楽しみにする子がいたりと、学びの広がりも見られました。Teamsでのオンライン学習では、教室よりも学びが豊かに広がっていくように感じました。

――「ふきのとう」のご実践を通して、もっと挑戦してみたいと思われたことはありましたか。

一つは、音読の教材なので、台本を読んだ音声を送ってもらうなど、音声を交えたオンライン学習ができるとよかったと思います。
二つ目は、デジタル教科書をもう少し活用したかったこと。参考として、工藤直子さんの朗読なども紹介したのですが、どのタイミングでだせばよかったか、他のコンテンツは使用できなかったか、検討の余地がありました。今回は、テキストで子どもたちとやり取りをしていましたが、動画や音声とテキストをどのように組み合わせるかが今後の課題です。既存のいろいろな素材をうまく融合させて考えていけるといいなと思います。


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