オンライン学習で見えたこと ――「ふきのとう」「たんぽぽの ちえ」の実践を通して ③

2020年6月18日公開

5月下旬、「たんぽぽの ちえ」の学習に取り組み始めた大村先生と子どもたち。そんな中、緊急事態宣言が解除され、学校が再開されました。今回のオンライン学習を通して、どんなことが見えてきたのでしょうか。

――全国で緊急事態宣言が解除されましたが、今、先生の学校ではどんな状況ですか。

学校が再開し、子どもたちは、二日に1回、午後か午前に登校しています(6月2日現在)。教室での対面式の授業と、オンライン学習をどのように組み合わせるのかを考えているところです。

――オンライン学習で現在も続いていることはありますか。

「たんぽぽの ちえ」の第3次が、分散登校中もオンライン上で盛り上がっています。「たんぽぽの ちえ」の学習がはじまったのが5月3週目です。第1次は、「たんぽぽの ちえ」を読んで感想を書く、第2次は、ワークシートを使って読みを確かめる、第3次は、第1次の感想をもとに、生き物の「ちえ」について調べたことを「けんきゅうノート」に投稿しています。
たんぽぽを牛乳で水耕栽培している子、たんぽぽを半分に切って種を観察する子、綿毛が飛ぶ条件を調べ、たんぽぽの綿毛が湿度計になるんじゃないかとまとめている子もいます。書いたものを写真にとってアップしてくれますが、パワーポイントのようで見ていておもしろいんです。こうした活動は、なかなか教室だけではできません。

「たんぽぽの ちえ」学習スタートのメッセージ

第1次で集まった感想を子どもたちに共有

第1次の感想や疑問をもとに、「けんきゅうノート」に投稿

――第3次の課題を出すときには、どのようなことをねらいとされたのですか。

「たんぽぽの ちえ」は、順序だけでなく、「ようす」と「そのわけ」という論理をとらえることを学ぶ大切な説明文だと考えています。そこで、学習指導要領に新設された「情報の扱い方に関する事項 ア 共通、相違、事柄の順序など情報と情報との関係について理解すること」を意識して指導しました。第2次を学習した際の投稿に対するコメントは、「ようす」と「そのわけ」についての気づきを促すような文言を多くしました。そうした学習を経た上で、第3次では、そうした思考を働かせて、表現するという活動を設定しました。課題を配信する際には、子どもたちの投稿を活用する形で、テーマを示したり、手引きとして、問いを立てて、予想して、調べる、分かったことをまとめて、自分の考えたことを書くという科学的思考を示したりしました。

――「たんぽぽの ちえ」のご実践をされる中で、今回のオンライン学習での難しさはありましたか。

第2次の学習に難しさを感じました。2年生は、文章とイメージとをつなげて読むことが読みの学習における重要なポイントの一つであると考えています。そのために、教室での学習では、第2次の読みをワークシートの穴埋めに終わらせない工夫を様々に行っています。例えば、動作化をしたり、実際に落下傘をとばすなどの実験をしたりしながら、教科書に書いてある内容を読み深めています。しかし、こうした指導は、オンライン学習では、なかなか設定しづらいですし、子どもたちの気づきを共有しながら理解を深めていくことも難しい面があります。文章の内容に関する場面を共有したり、いろんな言葉で何度も言い換えたり、事象についての気づきをやりとりする中で、文章とイメージとをつなげて読むことができるようになるのだと考えていますが、そうした学び合いをオンライン学習上で実現することは難しいと思いました。

――現在、教室での学習と家庭での学習を組み合わせて、学びを進めている学校が多いかと思います。家庭学習に適した課題には、どんなものがあるのでしょうか。

時間がかかること、個人差があることは、家庭学習に適しているのではないかと思います。
家庭学習とオンラインの授業をどう組み合わせるか、そこがいちばん難しいところです。今後一人一台タブレットが導入されますが、そうすれば、学校の教室ではイメージを共有し、みんなで学びを深め、そこで自分の問いをみつける。家庭では、その問いについて調べて、まとめて、オンライン上にアップして、学びを広げ、深める。ということができるのではと考えています。

――今後、オンライン学習において期待されていることはありますか。

オンライン学習のおもしろさとして、離れていても繋がれるということがあります。例えば、宮沢賢治の地元の岩手県の子どもたちは、「やまなし」をどう読むのだろうかなど、離れた場所の友達と交流することもおもしろいかもしれません。
また、プレゼン用のソフトを使って、オンラインで書いたり発表したりすることを学ぶこともできるかもしれません。
タブレット端末が1人1台使えるようになれば、児童が自分で配信を見たり、直接、入力したり投稿したりできるようになるので、授業の幅が広がると思います。今回は、保護者の端末を使ったということで、連絡用ツールとしての側面が大きく(課題の配信、投稿)、限界がありました。タブレットを文房具として、活用できるといいなと思っています。


掲載された記事および画像の無断転載を禁じます。