学校再開後のカリキュラム・マネジメント ポジティブに、今できることを考える①

2020年6月29日公開

大谷 俊彦(おおたに・としひこ)

高知市立城東中学校校長

公立中学校教諭を経て、県教育センター指導主事、県学校教育課指導主事、文部科学省主幹など歴任。著書に『「学校経営マンダラート」で創る新しいカリキュラム・マネジメント』(ぎょうせい)、『次代を創る「資質・能力」を育む学校づくり』(同・共著)など。光村図書『書写』教科書編集委員。

高知県では、4月7日から発令されていた緊急事態宣言が5月25日、約7週間ぶりに全面解除となり、ようやくすべての公立学校で授業が再開されることとなりました。

しかし、ステイホーム期間が長期化したことによる生活リズムの乱れ、学習意欲の喪失、学校再開後の学校生活への不安、中1ギャップに対する初期対応、高校入試に向けた学習保障、学校における感染予防対策等、多くの困難を抱えての出発となりました。

本稿では、そうした状況でのカリキュラム・マネジメントの在り方について、私の学校での取り組みをご紹介します。

学びの保障――授業時数をどう確保していくか

高知市では、学校休業期間が4月13日からの設定であったため、新年度になっての授業日は、入学式・始業式を含めわずか4日だけで、26日間の授業日が失われました。

現在、高知市教育委員会からは、夏季休業日の初めと終わりの計13日間は授業日に充てるという通知が届いていますが、それでも13日間、計78時間分が不足している計算になります。

文部科学省は、「授業時数を下回ったことのみをもって、学校教育法施行規則に反するものとはされない」、入学者選抜においては「地域における中学校等の学習状況を踏まえ、適切な範囲や内容となるよう設定」、中学1年生と2年生については特例的な対応として、「学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め、次学年又は次々学年に移して教育課程を編成」といった弾力的な判断を示しています。

しかし、現時点では、中学3年生の高校入試という学びのゴールを変更するという言葉は聞こえてきてはいません。これに加え、高知県の場合は、私立高校の受験日が1月下旬に設定されているため、例年、中学3年生は、この時期までに教科書を終わらせているのです。

学校行事等の精選も踏まえ、今後通常どおり学校活動が実施されるものとして授業時数を計算してみると、3年生が1月末までに昨年度と比較して30時間程度足りません。そこで、その不足している時数を確保するため、本校では、6月からは、木曜日に限り、1日7時間授業を実施することにしました。ただし、生徒の負担が過重にならないように、朝読書や掃除、夕自習は実施せず、7限目は学級活動の時間とし、学級担任がそのまま教室にいてすぐに帰りの会を実施できるよう配慮することで、7時間授業を行っても、通常より10~20分遅い16時25分には下校できるよう校時表の工夫も行いました。

各教科等のカリキュラム・マネジメント
――指導順序の変更と学習活動の重点化

この状況下で生徒の学びをどうやって評価し、的確に見取っていくかについては、各校悩みも多いことでしょう。たとえば、音楽などでは、「3密」回避の関係から、指導順序を変更し、先に鑑賞や創作の学習を行い、歌唱や器楽の学習を後に回すなどの工夫が取り入れられていますが、鑑賞や創作の中で「音楽表現の技能」をどう適切に評価していくかといったことについては明確な解決策が見えてきません。家庭科や体育でも、この時期実施できる内容が限定されていることから、同じ悩みを抱えています。

また、6月5日には、文部科学省から通知された「学校の授業における学習活動の重点化に係る留意事項等について」の中で、「学校の授業で扱う内容」と「学校の授業以外の場で扱う内容」が示され、授業における学習活動を重点化する案も示されました。さらに、各教科書会社からは、「学習活動の重点化等に資する年間指導計画参考資料」等の参考資料(※)も出されていることから、今後はそれらを参考にしながら、各教科のカリキュラム・マネジメントをより一層推進していきたいと考えています。

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