「書き初め」に願いや思いを込めて

「書き初め」に願いや思いを込めて

2020年12月11日公開

広島大学大学院教授 松本仁志

書き初めは、抱負や希望、縁起の良いことばなど、一年の始まりにふさわしいことばを、その年の恵方に向かって書くという伝統的な正月行事です。一人一人がこれから始まる一年間に思いをはせて、自分の思いに合ったことばを考え、心を込めて書くのが本来の姿です。

一方で、書写教育の一環として行われる書き初めは、伝統行事の体験的な学びの場であると同時に、これまでの書写学習の応用・まとめの場でもあります。姿勢や筆記具の持ち方、楷書、漢字と仮名、行書などに関する諸技能を実践の場に応用する学習でもあるのです。

したがって、書き初めの伝統的な意義について理解を深めるだけでなく、書写学習でこれまでに習得した知識・技能を生かすこと、及び生かそうとする意識・態度の徹底を図ることがねらいになります。「先生から書かされるもの」として認識されてしまうと、生徒にとって面倒な書字活動になってしまいますので、書こうとすることばの意味の理解、使用する筆記具と用紙の選択、書体の決定、配列・配置の検討といった、書き上げるまでの過程に寄り添いながら、丁寧に指導するのが理想です。

形骸化した伝統行事にならないように、教科書の字形例をただ書写させて済ませたり宿題で済ませたりするのではなく、次のような日常化の視点についての理解・意識化を授業の中で徹底させましょう。

  1. 今日の日常生活の中でも、書き初め、年賀状、のし紙などの伝統的書字活動が行われていること。
  2. これまでの書写学習で得た知識・技能は、書き初めなどの生活の中の伝統的書字活動にも生かすようにすること。

書き初めは、もはや学校における書写教育を通して国民レベルで受け継がれているといっても過言ではありません。

1年38-39ページ
低学年では、硬筆の書き初めを行います。
3年38-39ページ、6年49-52ページ

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