国語のおもしろさを学校からご家庭へ

国語のおもしろさを学校からご家庭へ
 ――授業のユニバーサルデザインをヒントにして ③

2020年6月25日公開

星槎大学大学院教育実践研究科 教授 阿部利彦
日本授業UD学会湘南支部顧問

1.授業UDのアイデアをヒントに物語文を楽しむ

本を読む楽しみを知っている保護者でないと難しいところはありますが、もし読書を楽しめるご家庭であれば、国語の教科書をより楽しむことができると思います。そのときのスパイスは前述した授業UD的「しかけ」です。
しかし、先生方のようにペープサートやセンテンスカードを使用したり、挿絵の並べ替えをさせたりなどは保護者には難しいと思いますので、ここでは家庭でもできるよう授業UDのアイデアを私なりにアレンジしたものをご紹介します。

①タイトル読み
先ほど述べたように、保護者も習ったかもしれないけれどあまり覚えていないお話について、親子でタイトルを手掛かりに内容を予想し合います。本文を読みあった後に、このタイトルがお話に合っていたか、について一緒に考えてもいいと思います。詩については、タイトルを隠して読んでから当ててみる、というのも楽しいでしょう。

②ダウト読み
何度か本文を読んだ後に、保護者が読み聞かせをします。その際、わざと間違う箇所を作り、子どもに「そこ、ちがうよー」とつっこませます。ゲーム感覚で「これから大事なところをわざと間違えるから、つっこんでね」と説明してから行うといいでしょう。間違いに気づいたら、そこを正しい言葉に直させることも加えるとさらにいいと思います。

③アナザーエンディング読み
お話について十分学んだあとで、ストーリーの別エンディングを考えてみるというのも楽しいでしょう。『スーホの白い馬』や『ごんぎつね』などは子どもたちの想像力がさまざまに発揮されると思います。

④監督読み
これは小学校高学年以上なら可能だと思われますが、このストーリーを映画(ドラマ)化するなら登場人物をどの俳優さんにするか、映画監督になった気持ちで考えてみるのも楽しめるでしょう。なぜその人がふさわしいと考えたのか、という話題から登場人物の人物像についてほりさげていくのがねらいです。声優に詳しい子もいますので、アニメ化するならどんな声優をキャスティングするのかも考えることができると思います。

2.家庭の協力を「当たり前」としない配慮

先生方は今、自分のしたい授業が思う通りにできず、残念な思いをしておられるのではないでしょうか? そうなるとつい家庭学習への期待が膨らんでしまいます。しかし、多様な子どもたちがいるように、その背景にある家庭も多様です。「勉強どころではない」家庭もあるでしょう。家庭学習が重荷となって家庭にマイナスの影響が出る恐れすらあるのです。
家庭での学習支援は「当たり前」ではなく、保護者が努力して作り出している学びの場であることを認め、ねぎらうことも忘れないようにしましょう。連絡帳や学級通信などを活用し、定期的に保護者の協力への感謝の言葉を丁寧に伝えていくことが連携の鍵となってくれると思います。

参考文献

『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法』桂聖編著、東洋館出版社、2013
『通常学級のユニバーサルデザインスタートダッシュ Q&A55』阿部利彦編著、 東洋館出版社、2017


阿部利彦(あべ・としひこ)

星槎大学大学院教育実践研究科教授

星槎大学大学院教育実践研究科教授。専門は教育相談、学校コンサルテーション。東京障害者職業センター生活支援パートナー(現・ジョブコーチ)、東京都足立区教育研究所教育相談員、埼玉県所沢市教育委員会健やか輝き支援室支援委員などを経て、現職。星槎大学附属発達支援臨床センター長、日本授業UD学会理事、日本授業UD学会湘南支部顧問を務める。

Illustration: 夏野なえ

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