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学習者用デジタル教科書を使ってみてわかったこと、変わったこと 【第2回】

学習者用デジタル教科書を使ってみて

2021年4月9日 更新

鈴木 秀樹・谷川 航 鈴木 秀樹:東京学芸大学附属小金井小学校教諭・東京学芸大学非常勤講師。谷川 航:東京都小平市立小平第三小学校主任教諭。

令和3年度から、文部科学省の学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業において、学習者用デジタル教科書の活用が、全国の半数近くの学校で始まります。そこで、以前から国語科の学習者用デジタル教科書を継続的に活用しているお二人に話を伺いました。

鈴木 秀樹

鈴木 秀樹

東京学芸大学附属小金井小学校教諭・東京学芸大学非常勤講師。慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻修士課程修了。マイクロソフト認定教育イノベーター。トランペット、CAI、村井実、I・イリイチ、サウンド・エデュケーション、対話型鑑賞、学級内SNS等々、これまでに関心を持って行ってきた全ての経験を、勤務校に着任してからの「ICT×インクルーシブ教育」に繋げて研究と実践に取り組んでいる。

谷川 航

谷川 航

東京都小平市立小平第三小学校主任教諭。東京学芸大学教職大学院教育実践専門職高度化専攻教科領域プログラム(情報)修了。初任校の東京都立北養護学校(現 東京都立北特別支援学校)病院訪問学級にて難病で治療中の子どもたちと情報機器を活用しながらベッドサイド学習を行なってきた経験が現在の研究に結びついている。漫画が趣味。蔵書が部屋に置ききれなくなり、デジタル教科書の影響もあって最近はもっぱら電子書籍に。

2.自分の考えを表現したくなる

効果があった典型的な学習活動を教えてください。
 

鈴木 今、中学校1年生になっている子たちは、5年生の6月から使い始めて、以後、国語は全てデジタル教科書を使いました。結果、国語の力、国語の授業に対するイメージがどんどん変わっていきました。最後の単元が6年生教材の「やまなし」だったのですが、単元中の学習課題は、全部子どもたちから出て来ましたよね。最初に読んだ後は、ここはみんなで話し合って解決したいとか、考えたいとか、子どもたちがやりたいことを全部出してきたので、私は何もしなかったっていうか・・・。教師の役割が、交通整理(或いはファリシテーターなのかもしれませんが)、子どもたちが教え合うのをどう整理するかというところに特化されて学習が進んでいくような感じがありました。

 

子どもたちがデジタル教科書を使って、「こういう活動すれば課題が解決できるんじゃないか」というイメージをもっているということですか?

 

鈴木 文章を読むのだったら、各自のやりやすい方法、つまり普通に読むでも良いし、朗読を聞くのでも良いというように、好きな方法で読めば良いということです。そうすれば自分に合った方法で自分の頭に入ってくる。マイ黒板を使えば考えがまとめられるものだ、と言う感覚は子どもたちがもっていたのではないでしょうか。

 

それまでやってきた学習活動を通して、例えば、1人1人がマイ黒板でやってきたことを見ていくと、なにができたのか、なにができるようになったのか、本人がわかるくらいになっているのでしょうか?

 

鈴木 そうですね。しかも、終盤はマイ黒板の機能が子供たちの活動にたえきれなくなってきていました。もっと自分の意見を書き込みたい、という願いですね。その意味で、新版で付箋が付けられるのはすごく大きいです。

 

表現したくなる。そのきっかけになっているのは?
 

 

鈴木鈴木 紙の教科書とノートで学習していたときには、子どもたちにしてみたら「適当な言葉を抜いてきて、ちょっと言葉を足すだけで時間いっぱい。それ以上はもういい、板書も写さなくちゃいけないし。」みたいな話だったと思うのですよ。それが、マイ黒板になることによって「教科書の言葉を抜き出すのに時間はかからない」ので、その上で「線を引いたりしてまとめることもできる」と。そうなると、そこから「自分が何を考えたか書きたくなる」わけです。だから6年生の2学期くらいのマイ黒板を見ると書き込みがすごく多くなりました。

たくさん抜いておいて、後で整理していく、そんな使い方が子どもたちに合っていたということですか?
 

鈴木 そうだと思います。たくさん抜いているうちに、自分の言いたいことができてきて、書きたくなってくる、という流れなのでは。たくさん抜くためには、たくさん読みますからね。たくさん読むとたくさん考えて、結果的に何か言いたくなってしまうのですよ、おそらく。

谷川 サイドラインとマイ黒板の効果がありました。鈴木先生とも被っちゃうけど、文章を抜くっていう活動は、今までも同じことはやってきましたが、文章をノートに書き抜くところで(頭の)メモリを使いきってしまう子どもたちがたくさんいたんだなと思います。デジタル教科書を使うと、文章を書き抜くところには全く力を使わず、そこから先の、これをどうまとめようかっていうところ、試行錯誤することに力を注ぐことができます。毎回授業後に、めあてについてどう考えたのかとか、どう考え方が変わったのかを、フィードバックとして書かせているのですが、6年生だとノート見開きが埋まるとか、もっと書かせてほしいとか、書きたいことがいっぱいあるようで、考えをまとめることを楽しむ子どもが増えました。デジタル教科書が入ったら、仕事が楽になると思ってましたが、今までよりノートを見る時間が増えました。でもそれは、教員にとっては嬉しいことですけどね。

 

マイ黒板を使うと活動が速くなるということでしょうか。
 

谷川 「こっちに変えたい」っていうときに、手書きのものを消すのって、たぶん、勇気がいるのかな、子どもは。マイ黒板だと何の躊躇も無く消せるっていうか。やっぱり「こっちに変える」となって、すぐに変えられるいうマイ黒板の手軽さは、試行錯誤をフォローするものだと思います。

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