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アクティブ・ラーニング Q&A 第7回

アクティブ・ラーニングQ&A

2016年12月9日 更新

冨山 哲也 十文字学園女子大学教授

今、関心が高まる「アクティブ・ラーニング」。先生方からの疑問にお答えします。

冨山哲也 (とみやま・てつや)

十文字学園女子大学人間生活学部児童教育学科教授。東京都公立中学校教員、あきる野市教育委員会、多摩教育事務所、東京都教育庁指導部指導主事を経て、平成16年10月から文部科学省教科調査官(国語)、国立教育政策研究所教育課程調査官・学力調査官。平成20年版学習指導要領の作成、全国学力・学習状況調査の問題作成・分析等に携わる。平成27年4月から現職。第1期<絵本専門士>。

第7回 年間指導計画の中での位置づけ方

Q:全ての授業で実現しようとすると、時間数が足りなくなりそうです。どうすればよいでしょうか。

A:年間指導計画に単元として位置づけるとともに、日常的な学習の中でできることを取り入れていきましょう。

私は、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業づくりの視点を、次の五つに整理しています(※)。

  1. 生徒が興味をもつ教材・題材と魅力的な導入
  2. 課題解決的な学習、既習事項を活用する学習
  3. 学習の見通し、本時の目標の明示
  4. 自分の考えを発表・交流する機会
  5. 「できた」「わかった」の実感、「できたこと」「わかったこと」の振り返り

これらの視点を取り入れて単元を構想すると、主体的・協働的な学習が展開されると思います。年間指導計画の中に、意図的に位置づけていきましょう。

画像、振り返り

授業時数を考える際に特に重要になるのが、(5)の視点です。この「振り返り」には、課題解決の過程の振り返りも含みます。単元を通じてどのように課題を解決してきたか、その道筋を認識することです。これを繰り返すことで、生徒は学習の見通しをもったり、自分の考えを発表・交流したりすることが速やかにできるようになるでしょう。すなわち、アクティブ・ラーニングを繰り返す中で、それに要する時間は短くなっていくと考えられます。

とはいえ、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業は、講義形式の授業より時間がかかることは否めません。ですから、常に(1)から(5)全ての視点を意識した単元構想をするのではなく、必要な視点を適宜取り入れた授業と組み合わせていくことになるのではないでしょうか。例えば、魅力的な導入を工夫するだけでも、授業は変わります。試みに、俳句の学習をする際に、

  • 外国の人が作った俳句を読んでみる。
  • 俳句と川柳の違いについて考えてみる。
  • 新聞等の「俳壇」の俳句を読んで、優秀句を選んでみる。

等の導入の工夫をしてみてはどうでしょう。俳句という文化の広がりや創作のおもしろさを感じたり、読む人による捉え方の違いに気づいたりします。そのことが、後に続く学習のよい動機づけになると思います。

アクティブ・ラーニングの考え方は、日々の授業をより魅力的なものにすることにつながります。

※ 『中学校国語科 アクティブ・ラーニング GUIDE BOOK』(冨山哲也 編著/明治図書出版)

Illustration: Chiaki Tagami


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