
アクティブ・ラーニングQ&A
2017年2月6日 更新
冨山 哲也 十文字学園女子大学教授
今、関心が高まる「アクティブ・ラーニング」。先生方からの疑問にお答えします。
冨山哲也 (とみやま・てつや)
十文字学園女子大学人間生活学部児童教育学科教授。東京都公立中学校教員、あきる野市教育委員会、多摩教育事務所、東京都教育庁指導部指導主事を経て、平成16年10月から文部科学省教科調査官(国語)、国立教育政策研究所教育課程調査官・学力調査官。平成20年版学習指導要領の作成、全国学力・学習状況調査の問題作成・分析等に携わる。平成27年4月から現職。第1期<絵本専門士>。
第9回 評価はどう変わる?
Q:評価の考え方や方法はどう変わるのでしょうか。
A:単元全体を見通して、1単位時間の中でつけたい力を明確にし、評価と指導を繰り返すことが引き続き重要です。
第8回で述べたように、アクティブ・ラーニングは1単位時間で全てが実現されるわけではありません。「主体的・対話的で深い学び」を単元全体で構想することになります。その中で、各時間のねらいに即して適切な評価を行うことが大切です。
例えば、「俳句の可能性」「俳句を味わう」(3年)を教材とし、「俳句のベスト3を決めて選評を書こう」という言語活動を設定した単元を構想するとします。全4時間で、次のような展開を考えました。
第1時
言語活動を理解し、学習の見通しをもつ。「俳句の可能性」を読み、俳句を味わうための観点を見つける。
第2時
「俳句を味わう」の九つの俳句の概要を理解するとともに、第1時で設定した観点に基づいて味わい、自分なりの「ベスト3」を決める。
第3時
「ベスト3」に選んだ俳句について選評を書く。同じ句を選んだ人どうしで考えを交流し、 選評の内容を豊かにする。
第4時
グループで「ベスト3」と選評を発表し合う。そのうちいくつかを学級全体に発表し、教師の発問で深める。
この授業の中で、どのように評価を進めたらよいでしょう。
第1時では、学習内容への興味と、学習活動への意欲をもつことが重要です。そこで、「国語への関心・意欲・態度」の観点から、生徒が単元の見通しをもって取り組もうとしているかを評価することが大事になるでしょう。また、「俳句の可能性」を適切に読み取って観点を見いだせているかを、「読むこと」の指導事項イに基づいて評価することも考えられます。
第2時では、 「ベスト3」を決めるために、九つの俳句を解釈して自分の考えをもつことになります。句の解釈は指導事項ア、自分の考えをもつことは指導事項ウやエに基づいて、それぞれ「読む能力」で評価することになるでしょう。また、 直前の教材「和語・漢語・外来語」で学習した知識の活用を促し、「言語についての知識 ・ 理解 ・ 技能」で評価することも想定できます。
第3・4時では、交流による考えの広がりや深まりが目標になります。引き続き、指導事項ウやエに基づいた評価をすることになりますが、第2時からの変化を見るようにします。また、この授業では、単元全体を通して、俳句という文化に親しみ理解を深めることが大切です。そのことを単元末に振り返り、改めて「国語への関心・意欲・態度」で評価することも考えられます。
このように、生徒の主体性や対話的な学びを重視しながら、国語の力が確実に身についているかを計画的に評価することが引き続き必要です。
なお、「審議のまとめ」では、次期学習指導要領から、評価の観点を、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つに統一する方向性が示されましたが、今回例示したような実践を進めることで十分対応できるものと思います。
Illustration: Chiaki Tagami