
アクティブ・ラーニングQ&A
2017年7月19日 更新
冨山 哲也 十文字学園女子大学教授
今、関心が高まる「アクティブ・ラーニング」。先生方からの疑問にお答えします。
冨山哲也 (とみやま・てつや)
十文字学園女子大学人間生活学部児童教育学科教授。東京都公立中学校教員、あきる野市教育委員会、多摩教育事務所、東京都教育庁指導部指導主事を経て、平成16年10月から文部科学省教科調査官(国語)、国立教育政策研究所教育課程調査官・学力調査官。平成20年版学習指導要領の作成、全国学力・学習状況調査の問題作成・分析等に携わる。平成27年4月から現職。第1期<絵本専門士>。
第11回 新学習指導要領実施までの移行期の指導(2)
Q:新しい学習指導要領の実施までの移行期に、現行の教科書をどのように活用して授業改善につなげたらよいでしょうか。
A:課題解決的な言語活動を取り入れた授業を継続しながら、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の観点で指導の改善を進めることが大切です。
前回(第10回)からの続きです。第10回の内容については、以下のリンクから。
「字のない葉書」を例に
では、現行教科書の学習の手引きを活用した移行期の授業について、「字のない葉書」(2年)を例に考えてみましょう。

目標
単元の目標の確認は、主体的な学びに欠くことのできないものです。これまでの学習経験を踏まえつつ、新たに学ぶ内容について学習のイメージを作ることが大切です。
例えば、既習の「大人になれなかった弟たちに……」(一年)から、ヒロユキを棺に入れたときに母が初めて泣いた場面を取り上げ、「言動」から人柄や心情を捉えることのイメージをもたせます。また、父親に対する「私」の思いを捉えるために、「私」の立場で「父親に手紙を書く」という言語活動を設定することが考えられます。その際には、登場人物に手紙を書くことの意味と手順について理解を図っておくことが必要になります。
読みを深めよう
いずれも、個々の考えを交流によって深めることに適した課題だといえます。
1については、父親を表す多様な語句(筆まめ、罵声、折り目正しい、訓戒、威厳、暴君、照れ性など)への着目を基本にしたいと思います。併せて、「私」の父親に対する思い(こそばゆい、晴れがましいなど)を押さえることも重要です。多様な語句が、人物像や心情を豊かに表現していることに気づくことは、国語の学習として意義深いものです。
2は、この単元の学習の中心となる課題です。目標に照らし、人物の言動が書かれた部分を見つけるとともに、その意味を考え、人柄や心情を捉えることになります。それらを交流する際、「優しい」「妹思い」など、一般的な言葉でまとめただけでは対話的な学びになりにくいと思われます。やはりここでも、一つ一つの語句に丁寧に着目させ、その語句を手掛かりに自分の思いを語ることが大事になるでしょう。
例えば、「出窓で見張っていた」という弟の言動に着目し、「『見張っていた』というのは、単に『見ていた』のとは違う。帰ってくる妹を少しでも早く見つけようとしているということで、妹が大好きなことがわかる」というように考えが伝えられたらどうでしょう。こういう言葉への気づきを促したい部分が、他にもたくさんあります。
3は、さまざまな考えが想定できる課題です。個々の生徒の生活体験からも影響を受けるでしょう。このままの形で問いかけても考えがまとまらない生徒もいるので、例えば、前述したように「父親に手紙を書く」という活動を取り入れることで、考えが表しやすくなるかもしれません。
本連載は、今回が最終回です。ご愛読、ありがとうございました。
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