教科書クロニクル 小学校編
2023年6月29日 更新
光村図書出版
あなたが小学生・中学生だったころ、国語の教科書にはどんなお話が載っていたでしょう。「教科書クロニクル」で記憶をたどってみませんか。
教科書クロニクル 小学校編
2023年6月29日 更新
あなたが小学生・中学生だったころ、国語の教科書にはどんなお話が載っていたでしょう。「教科書クロニクル」で記憶をたどってみませんか。
重松 清
「ぼくは悪くない。」小学校6年生のひろしは、お父さんに謝る気はなかった。1日30分の約束を破ったからって、いきなりゲーム機のコードを抜いて電源を切るなんて。お母さんの帰りが遅い「お父さんウィーク」で、お父さんが特製カレーライスを作ってくれても、口をきかない。3年生までは好きだったカレーのルウが、今は甘ったるい。
風邪をひいたお父さんのためにひろしが作ったのは、「中辛」カレー。「そうかあ、ひろしも『中辛』なのかあ」お父さんはうれしそうだった。仲直りした二人の特製カレーは、ぴりっとからくて、ほんのり甘かった。
山本東次郎
出羽の羽黒山で修行を終えた山伏が、国に帰る旅の途中。人家の庭になる柿を落とそうと、「えいえい、やっとな。」と言いながら、刀や石で落として食べているところに、柿主が登場。柿主は、柿を取ったのはカラスだ、サルだ、トビだと言い、見つかりたくない山伏にそのまねをさせて、からかう。高い所から飛び下りて腰を打った山伏を捨ておいたほうがよいと考えた柿主は、山伏を置いて去ってしまう。柿主を追って「やるまいぞ(逃がさないぞ)。」と言いながら、山伏も退場する。
大牟田 稔
1915年、広島市に建てられた物産陳列館は、1945年8月6日の原爆投下によって全焼し、レンガと鉄骨の一部だけの「原爆ドーム」となる。原子爆弾が人間や都市にどんな惨害をもたらすかを無言で告げる原爆ドームは、1996年、世界遺産に指定された。それは世界の人々の、平和を求める気持ちの強さを感じさせる出来事だった。
国連のユネスコ憲章には、「戦争は人の心の中で生まれるもの」と記されている。原爆ドームは、見る人の心に平和のとりでを築くための世界の遺産なのだ。
宮沢賢治
小さな谷川の底を写した幻灯による物語です。
5月、2匹のかにの子どもたちが、青白い水の底で話しています。「クラムボンは 笑ったよ。」「クラムボンは かぷかぷ笑ったよ。」天井を、つぶつぶ暗い泡が流れていきます。かわせみがやって来て、魚を捕まえていきました。
12月、かにの子どもたちはだいぶ大きくなりました。月が明るく水がきれいな夜、トブンと、黒い丸い大きなものが、天井から落ちてきました。お父さんのかには「やまなしだ」「おいしいお酒ができる」と言い、親子のかには自分たちの穴に帰っていきました。
立松和平
太一の父は、代々続く潜り漁師だった。ある日、父は、瀬の主である大きなクエを捕ろうとして死ぬ。太一は、一本釣り猟師の与吉じいさの弟子にしてもらう。与吉じいさは「千びきに一ぴきでいい」と言って、毎日タイを20匹しか捕らない。
一人前になった太一が、父の死んだ瀬に潜ると、穴の奥に大魚を見つけた。父を破ったクエかもしれない。しかし、対峙するうちに、大魚はこの海の命だと思えた。太一は言った。「おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。」太一は、村一番の漁師であり続けた。