学力を伸ばす学級経営Q&A
2019年11月21日 更新
神山 安弘 専修大学客員教授
「主体的・対話的で深い学び」の視点から学級経営を考えるヒントを紹介します。
神山安弘(かみやま・やすひろ)
1951年横浜市生まれ。専修大学客員教授。元東京都江東区立明治小学校統括校長。文部科学省「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議委員」などを歴任。
第10回 11月の学級づくりと授業改善のポイント
~低学年から実践する「対話的な学び」~
Q.2年生を担任していますが、子どもの実態から授業で「対話的な学び」を実践することが難しいと感じています。2年生では「対話的な学び」をどのように考え、実践していけばいいのでしょうか。
1 「対話的な学び」の確認
まず「対話的な学び」の基本的な考え方について確認したいと思います。中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成28年12月)で、「対話的な学び」は『子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める』と説明しています。
学校は子どもたちが友だちとかかわり合いながら学びを深めていきます。子どもが互いに違いを認め合い、支え合い、高め合いながら協働して学ぶ場所です。多様な考えの友だちとコミュニケーションを取りながら意思や活動の相互交流を行います。「対話的な学び」の実践は授業を構成する基本の学習活動だといえます。
2 「対話的な学び」を支える力
小学校での「対話的な学び」は、子ども相互の協働的な学びである「話し合い(学び合い)」活動が多く実践されています。ペア、グループ、学級全体で行う「対話的な学び」は授業を構成する重要な学習活動の一つです。小学校に入学した1年生の段階から繰り返し基本の力を指導することが大切です。対話的な学びを「支える力」について確認しましょう。
(1) 子どもの「居場所」がある学級づくり
子どもが安心して自分を表現することができる学級づくりです。学級の友だちと仲がよく、楽しい学校生活を送ることができる学級経営を目指しましょう。
(2) 子ども自身が意欲的に学習を進める「学び方」の定着
子どもが意欲的に授業に向かう態度、発言の仕方、話の聞き方、ノートのつくり方、友だちと調べたりまとめたりすることなど、「学び方」の定着を目指しましょう。
(3) 子どもが対話的な学びの「楽しさ」を実感できる授業
友だちと一緒に活動する協働的な学びは、多くの疑問、驚き、気付きなどの発見があり、協働して学習することが「楽しい」と実感できる授業を目指しましょう。
3 「対話的な学び」を実践する力
「対話的な学び」は、授業の方法や技術の改善だけを目指すものではありません。子どもの資質・能力を育むために「対話的な学び」の視点で授業改善を進めることです。「対話的な学び」を実践するには、「言語」に関する力と「協働」して活動する力が必要です。この2つの力は、学校教育の基本であり小学校に入学した1年生から育むことが大切です。対話的な学びを「実践する力」について確認しましょう。
(1) 「伝える」力を育む
訪問した1年生の教室に「声を届ける」と大きく書かれた掲示物がありました。授業は学級の友だちに自分の考えをきちんと伝えること、自分の声を学級全体に届ける意識が大切です。大きな声ではっきりと発言できるようにしましょう。
(2) 「よく聞く」力を育む
友だちの発言を「よく聞く」ことです。体全体で伝える人の声を聞く力です。聞く力は友だちの存在を100%受けとめ認めることです。話す人の顔をしっかり見て、話の内容を理解しながら聞く態度は、子どもが他者の人権を尊重する基礎の力です。
(3) 「つなげる」力を育む
交流を深めるためには「つなげる」言葉が大切です。友だちの考えと自分の考えをつなげることで、多様な視点に気付き、多角的に考えるようになります。「つまり」「例えば」「なぜなら」「関連して」などの言葉を使えるようにしましょう。
(4) 「受容・共感する心」を育む
友だちの発言に対して「称賛」「共感」「励まし」「助言」など、交流では受容的・共感的に対応できることが大切です。「そうだね」、「すごいね」、「びっくりした」、「それで」、「こうするといいよ」などの言葉は豊かな人間関係を育みます。
4 授業の質を高める「主体的・対話的で深い学び」
2020年度から小学校で新学習指導要領が全面実施されます。今、どの教室でも「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善への挑戦が行われています。この時期に再度、改訂の趣旨を確認し、各学年各教科等の特色や子どもの実態などを踏まえた授業改善を進めることが大切です。授業の質を高める「対話的な学び」について確認しましょう。
(1) 教師が「教える」こと、子どもが「考える」ことの構成
単元や題材などの内容や時間のまとまりの中で、教師が教える「内容と場面」、子どもが考える「内容と場面」を明確にします。「指導すること」と「活動させること」の内容を検討し、単元や題材の指導計画を構想することです。
(2) 「対話的な学び」の目的
「対話的な学び」は授業の質を向上させ、教科等の「目標」を達成させる学習活動です。そのために活動は「何のために」「何を」「どのように」「いつまでに」「まとめ方は」などを明確にし、子どもが「見通し」をもち活動に参加できるようにすることです。
(3) 言語活動に関わる学習の充実
子どもの話し合い活動が、「つながり」「成立」するためには言語能力の育成が大切です。子どもの発達段階を踏まえ、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力の言語能力を学校教育全体でどのように育成するのか構想することです。
次回は、1月予定です。
Illustration: みずうちさとみ