2022年1月14日 更新
2021年度から新学習指導要領が全面実施されました。学習評価はどのように変わったのでしょう。
中村一哉先生(実践女子大学特任教授)にヒントを聞いてみましょう。
監修:中村一哉/マンガ:あべかよこ
評価を正しく理解し、自信をもって評価しよう!
1.学びの構造を理解しよう
今回の学習指導要領は、全教科を通じて教科の目標や内容を三つの資質・能力に整理して、学習の構造を明確化しました。それぞれの資質・能力はバラバラに働くのではなく、互いに関連して学びを成立させます。習得した「知識及び技能」を活用しながら「思考力、判断力、表現力等」を高め、「学びに向かう力、人間性等」を養うことで、学習内容を生活や社会の中で働く力として発展させて「生きる力」に結び付けていきます。学習指導要領の学びの構造を正しく理解し、それにもとづく授業を行うことが、説得力ある評価を行ううえで不可欠です。
2.何を評価するのか、正しく理解しよう
評価は、育成する資質・能力に対応したそれぞれの観点で行います。
美術の「知識」は、造形を豊かに捉える多様な視点である〔共通事項〕で評価します。また、「技能」は発想や構想したことなどをもとに工夫してあらわす創造的な技能ですから、作品の出来栄えの比較ではなく、どのように表現したいかという生徒の思いを踏まえて評価することが大切です。
「思考・判断・表現」は、「発想や構想」と「鑑賞」の二つを評価します。表現の「発想や構想」では、生徒が主題として強く心にあらわしたいと思うこと(発想)と、それをどのように表現するかの考えや判断(構想)を評価します。「鑑賞」は活動を通した生徒の「見方や感じ方」の広がりや深まりを、発言や記述等から評価していくことになります。
「主体的に学習に取り組む態度」は、他の二つの資質・能力を身につける際に、どのように粘り強く取り組んだか、自分の制作や見方を振り返って次につなげたかなどの態度から評価します。
美術科では、創造活動のどの場面で資質・能力が働き、どのように関連し合って伸びたかなどを捉えて評価します。その際に、評価の内容を正しく設定し、常に生徒の思いや考えを把握しながら、表現や鑑賞の過程の中で生徒の変容を捉えていくことが重要です。
中村一哉(なかむら・かずや)
実践女子大学特任教授・元東京都府中市立府中第五中学校校長。中央教育審議会「芸術ワーキンググループ」委員。学習指導要領(平成29年告示)作成協力者。光村図書中学校「美術」教科書の編集委員を務める。