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スペシャルインタビュー 大前粟生

「飛ぶ教室」のご紹介

2017年11月16日 更新

「飛ぶ教室」編集部 光村図書出版

児童文学の総合誌「飛ぶ教室」に関連した企画をご紹介していきます。

スペシャルインタビュー 大前粟生「小説を書き始めて、子どもに戻る?」

「だれが一番カレーをおいしく食べることができるのか」。「カレーライス」をテーマにした51号の特集に、どこか滑稽さやユーモアも感じる「わたしたちがチャンピオンだったころ」を書き下ろしていただいた大前粟生さんに、今回の作品や子どもの頃のことなどを伺いました。

画像、大前粟生
大前粟生さん
画像、飛ぶ教室51号
「飛ぶ教室」第51号

「カレーライス、大会、食べる」三つのキーワードから

今回の作品の発想はどんなところからですか?

大前 まず、何かの大会にしたら、どうだろうと思いました。大会だとルールが必要になるので、そこから話が広がっていけるかと。今回はカレーがテーマでしたし、そのカレーを「作る」か「食べる」かにしようと考えて、結局「食べる」にしました。「カレーライス」「大会」「食べる」そんな三つをキーワードにして書き始めたんです。いつも小説の中の環境が整っていれば、登場人物がそれに振り回されてくれるので、それを追ってばーっと書いていく感じですね。

今回は、読者層に子どもを含めて依頼させていただきました。これまでの作品との違いはなんでしょうか?

大前 今までの作品は、細かい設定や説明をあまりしていないですね。読んでいる人が、例えば過去の読書や映画などの体験を思い起こすことで、それと結びついて、組み立てて読んでくれたらいいなと思っているんですが、今回は、最初に「だれが一番カレーをおいしく食べることができるのか」という設定を示しておいて、大会が進行していく通りに書いていきました。

中垣ゆたかさんが描いてくださった扉絵の中に
宇宙人や幽霊を発見する大前粟生さん

子どもの本にもっと面白い妄想を

どんな子どもだったんでしょう?

大前 大人しい子どもだったんじゃないかと思います。兄がいて、幼稚園頃からスーパーファミコンで遊んだり、遊戯王カードで遊んだりしていました。手の届く範囲の作られたもので何度も遊んでいましたね。ゲームで遊んでいない時でも、例えばバスに乗っている時、バスの動きと、頭の中にあるゲームの進行方向を連動させて、窓の外ではキャラクターを自由に動かしていました。

面白い遊びですね。子どもの頃、どんな本を読んでいましたか?

大前 漫画を読んで、よく妄想をしていました。『ワンピース』だったら、自分は「悪魔の実」は何を食べるかな、とか。あと、絵本では『三びきのやぎのがらがらどん』や『じごくのそうべえ』が記憶に残っています。『じごくのそうべえ』は、主人公がいろんな地獄を転々とするお話なんですが、怖かったですね。怖いのは苦手なんですけど、どうせフィクションだから、自分には害はないだろうって、どこかフィルターを通した感じで、読んでいました。

子ども向けの作品、これからも書いてみたいと思いますか?

大前 書いてみたいですね。子どもの頃、もっと変な話を読んでおきたかったです。例えば、岸本佐知子さんが訳されているようなアメリカの小説の中には、妄想をすでに小説がしてくれているものがあるので、そこを起点としたら、もっと面白い妄想ができるのではと思います。そんな子どもの本があったらなあ、と思います。

肩こりが「まし」になる小説を書きたい

小説を書くきっかけは何だったのでしょう?

大前 就職活動していた時に、気分転換をしたいな、と思ったんです。そう考えた時、何かを作ったらいいのではないか、と取りあえず書き始めたのがきっかけです。それまでは、特に何かを書いていたわけではなくて……。

小説を書き始めてから変わったことはありますか?

大前 実は、小説を書き始めてから、幼児退行しているように感じていて。小学生がしたり、考えるようなことをよくしていますね。例えば、夜中に歩いていると見間違えをよくします。しかも、その見間違え方が、自分の小説の中に出てきそうなものだったりするんですよ。現実と妄想の区別はあるけれども、そこに頓着がない、というか。

子どもは、現実と空想の境目がなくて、どちらも行き来ができると聞きます。これからはどんな作品を?

大前 読んで肩こりがちょっとでもましになるようなものを書きたいなと思っていて、軽い小説を書きたいですね。あと、あらゆるエンターテインメントの中で小説がいちばん笑えるのでは、と思っています。読まれることで、小説は作られていくと思うんですけど、読んでいる人が自分からつっこめる、作者と読者が二人の間で、それぞれの笑いがあるようなものを作っていきたいです。

余白を楽しめる作品、楽しみにしています。
   最後に、特集にちなんで、好きなカレーを教えてください。

大前 お肉がたくさん入ったカレーが好きですね。何肉かは、妄想におまかせします。


画像、大前粟生

大前粟生(おおまえ・あお)

1992年兵庫県生まれ。小説家。2016年「彼女をバスタブにいれて燃やす」がGRANTA JAPAN with早稲田文学公募プロジェクト最優秀作に選出され小説家デビュー。同年「ユキの異常な体質または僕はどれほどお金がほしいか」で第2回ブックショートアワード受賞。電子書籍レーベル〈惑星と口笛ブックス〉にて、短編集『のけものどもの』発売中。

 

画像、「飛ぶ教室」オリジナルノート「飛ぶ教室」第51号のアンケートにお答えいただいた方から抽選で、加藤さんが今号のために描いてくださった表紙の絵を使った、「飛ぶ教室」オリジナルノートをプレゼントいたします。詳しくは、本誌をご覧ください(なお、ご応募の締め切りは、2018年1月24日です)。

「飛ぶ教室」51号の内容は、こちらからご覧いただけます。

飛ぶ教室 第51号(2017年秋)

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