みつむら web magazine

『オランジェット・ダイアリー』刊行記念対談 黒川裕子×星野ルネ【番外編】 第1回

オランジェット・ダイアリー

2024年1月25日 更新

光村図書 出版課

愛媛県の宇和島市とアフリカのガーナが舞台の物語、『オランジェット・ダイアリー』に関する情報をお届けします。

オランジェット・ダイアリー』(光村図書)は、愛媛県宇和島市のみかん農家の一人娘である本宮樹々と、ガーナ生まれ日本育ちの杉本リクが、進路や夢について考えていくYA小説です。作者の黒川裕子氏と、本作品の帯に言葉を寄せてくださった、カメルーン生まれ日本育ちの漫画家・星野ルネ氏に、それぞれの創作にまつわる思いを語っていただきました。

授業にこそ物語作りが必要

星野

学校の教科は算数、理科、国語といろいろあるけれど、個人的にはもう少し物語作りに力を入れてほしいですね。

黒川

ほんとうに。日本の国語の授業では、お話作りや創作活動が欠けている気がして……。暗記や出題されたものを読み解くのも、もちろん大切ですけど、お話を創ること自体もとっても大切なことじゃないかなあ。

星野

創作することで想像力が養われますよね。例えば、様々な背景がある登場人物が出てくるお芝居を作る課題をグループで取り組むとなったら、登場人物の立場にならないとセリフって考えられないと思うんです。「Aさんは〇〇で育ったから、こんなときはこういう言い方をするはず」「いや、おれはこういうセリフだと思うよ」とか、いろいろ想像力を働かせてディスカッションする過程で、自分とは違ったモノを考えるプロセスが学べるんですよね。

黒川

誰かの視点になってモノを考えるということですね。

星野

ええ。これからの社会で一番重要なことだと思います。みんな横並びで、同じ考えというのは安心感があるとは思うんだけど、そこに安住していられるような時代は終わっているんじゃないのかな。

本質的な材料の提供

星野

ぼくの父親は大学の先生だったんですけど、日本式の教育では、彼でさえも無意識に、みんなに同じ課題、同じ答えを求めさせることが正しいと思っている節がありました。もともと人間はみんな違っているんだから、同じになるはずないじゃないですか。でも、そうやって同じ型にはめ込む教育をしながら、就職するときには、「あなたの個性はなんですか」と聞かれたりするんだから(笑)、あんたら大人が奪ったんだろ!その個性をって思います。

黒川

矛盾していますよね(笑)。わたしは、なんでも小説のことに結び付けて考えてしまうんですけど、やっぱりこれからも子どもの本を創作していくことに意味があるって思っています。

星野

子どもの本は気を遣いそうだけど、どうですか?

黒川

大人向けの小説の中の女性や子どもといった登場人物は、ともすると作品のために生まれてきたような描かれ方をするものも多いと思っているんです。でも、子ども向けの小説は、子どもそのものをストレートに描けますから。大変ですけど面白いです。

星野

ぼくは毎週「毎日小学生新聞」で子ども向けの1ページ漫画を連載しているんですが、大人向けに書くものより、子ども向けに書くもののほうが気を遣います。子どもはストレートに受け止めてもくれますが、ストレートに受け取っちゃうから。

黒川

ああ、確かに。

星野

「これが正義」「これが悪」とか断定的なことは書かないようにしていて、物事の本質的な材料は提供するんだけど、それをどう育んでいくのかは君に任せるよ、というような書き方をしている。

黒川

ある程度余白を持たせるのは大事ですよね。ぎっしり書いてあると大人でもしんどい。

星野

子どもたちには、自分で考える力を持っていってほしいですから。

(2023年10月26日/光村図書本社にて) 

黒川裕子氏 画像
黒川裕子氏

(この対談の【本編】は、2024年1月25日発売予定の「飛ぶ教室」76号に掲載します)

黒川裕子(くろかわ・ゆうこ)

YA、児童書作家。著書に『となりのアブダラくん』『#マイネーム』『ケモノたちがはしる道』などがある。

星野ルネ(ほしの・るね)

漫画家、タレント。4歳直前で母の結婚に伴い来日し、以降、兵庫県姫路市で育つ。著書に『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』などがある。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集