ココロノナカノノノ
2023年12月26日 更新
光村図書 出版課
母の妊娠と家族、中一少女の心の模様を描いたYA小説『ココロノナカノノノ』に関する情報をお届けします。
物語を書くきっかけ
戸森
先ほども言ったんですけど、私、空想好きの子どもで、一日の大半を現実とは違う世界で過ごしていて、それを普通と思ってきました。でも、大学生になったら急に現実が忙しくなってきて、ふと気がついたら心の中の空想のキャラクターがいなくなっていたんです。しかも、いなくなっても平気な自分がいることにひどくショックを受けて、そのことが原因で大学を一年休学しました。
河合
自分自身にショックを?
戸森
はい。
河合
自分自身に向き合って、立ち止まったんですね。その時の周りの人たちの反応は?
戸森
空想の世界があるってことを理解してくれる人があまりいなかったですね。そのころ通っていた心療内科の先生に「物語を書こうと思う」と言ったら「それはすごくいい」って賛成してもらえて、書きはじめたら元気になれました。心の中に積もっていくようなことを外に出す手段として、物語を書くことは自分に合っていたんだと思います。
河合
そこが戸森しるこの原点なんですね。どこか今回の主人公の寧音に似ている部分もあります。
名前を付けるタイミングは?
河合
しるこさんの作品は、登場人物の名前の付け方が秀逸で、読むたびに発見があります。今回はそう来たか!って。
戸森
ありがとうございます。普段からいいなと思うものをノートに書き留めたりしています。
河合
名前が大きな意味を持って物語にかかわってきたりもしますよね。名前はどの段階で決めて、物語に差し込んでいきますか?
戸森
作品によっては先に名前が決まっていることもあるんですが、今回は「ココロノナカノノノ」というタイトルが先に決まっていました。
河合
え? じゃあ、野乃が決まってから、奈菜(なな)とか寧音が出てきたんですか? 親子の関係性が先ではなくて。
戸森
はい。河合さんは?
河合
名前が最初に決まっていることはまずないです。とりあえず仮名やAやBにして、書いているうちにしっくりくる名前に決まることもあります。
戸森
ええ! それはしたことない!
河合
ふふ。書き方もいろいろですね。
「書く」ということ
お二人にとって「書く」ということは、どういうことですか?
河合
湧いてくる思いやイメージを、誰かと共有したいっていう、欲求とか衝動に近いかな……。下の子が生まれてからとにかく時間がないのに、それでも一日四時間ぐらい捻出して、構想したり書いたりしようとしている。もう少しゆっくりすればとも思うんですけど、そこまでして書きたいものがあるということは、いい状態なんだと思うようにしています。
戸森
私は、自分を励ますため、生きるために書いている感覚があります。でも、いつかは「書く」ために生きるようになりたいです。あと、誰かのために書くということもいつかしてみたいです。これからどんな作家になるか分からないけど、楽しみに進んでいきたいと思います。
(この対談の全文は、2023年10月25日発売の「飛ぶ教室」75号にてお読みいただけます)
戸森しるこ(ともり・しるこ)
児童文学作家
1984年埼玉県生まれ。児童文学作家。『ぼくたちのリアル』で講談社児童文学新人賞、児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞。『ゆかいな床井くん』で野間児童文芸賞受賞。
河合二湖(かわい・にこ)
作家
1977年、山口県生まれ。作家。『バターサンドの夜、人魚の町で』で、講談社児童文学新人賞を受賞、同作(『バターサンドの夜』と改題)でデビュー。