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『ココロノナカノノノ』刊行記念対談 戸森しるこ×河合二湖 第1回

ココロノナカノノノ

2023年8月8日 更新

光村図書 出版課

母の妊娠と家族、中一少女の心の模様を描いたYA小説『ココロノナカノノノ』に関する情報をお届けします。

一年半にわたり『飛ぶ教室』で連載された、児童文学作家・戸森しるこ氏の作品「ココロノナカノノノ」が一冊の本になりました。刊行を記念して、作家・河合二湖氏と、作品や創作について語り合います。

「妊娠」×「イマジナリーフレンド」

戸森

お久しぶりです。

河合

本当ですね! 2019年の野間児童文芸賞の受賞式にも呼んでくださったのに、下の子が生まれる直前でお会いできずでした。その後すぐにコロナ禍になって……。

戸森

私も、対面で作家さんにお会いするのは、ずいぶん久しぶりです。

河合

早速ですが、『ココロノナカノノノ』拝読しました。読む年代や立場によって、いろいろな感想が持てそうな作品だと思いました。まず、「妊娠」をテーマに書いてみようと思ったきっかけは?

戸森

この連載のお話をいただいた時に、ちょうど妊娠について考えていたんですよ。私自身は、子どもを産む気がないタイプの人間なんですが、どうしてこんなにも興味がないのかと疑問に思いまして。物語として扱った時に、少し興味が持てるんじゃないかと。

河合

書き終えて、どうでしたか?

戸森

やはり興味は湧いてこなくて、子どもは産まなくていいという確認になりました。でも、妊娠について勉強をしてみたいという気持ちはあって、連載を機に妊娠と出産の本を取り寄せて勉強をしました。一年半かけて物語の主人公・寧音(ねね)といっしょに妊娠と出産について学んだ感じですね。例えば、章タイトルの一つでもある「バニシングツイン」という言葉は、本で勉強しながら作中に取り入れたものです。

河合

キーになる言葉から物語をふくらませたのではなく、書きながら気になった言葉を取り入れたのですね。物語は、一章につき一か月ずつ妊娠の月数が進んでいきますね。

戸森

はい、それは最初の打ち合わせで決めました。

河合

寧音の双子の妹である野乃(のの)が欠落した存在として出てくること自体はどうですか?

戸森

野乃の設定ははじめから決まっていました。もう一つのテーマに、心の中に大切な存在としている、イマジナリーフレンドを書いてみたいという気持ちがあって。実は、私自身にも中学生の時に、心の中にそういう架空のキャラクターがいて、大人になるまでずいぶん励まされていました。今回は、それと妊娠を掛け合わせて書いてみようと思って。

河合

作中に登場する比企(ひき)さんというクラスメイトにも、イマジナリーフレンドがいますね。主人公の寧音とはまた違った存在として描かれていますが、しるこさんはどっち派ですか?

戸森

私は、比企さん派ですね、……たぶん。でも、どのキャラクターも自分と似ている部分がある気が……。私、河合さんの『向かい風に髪なびかせて』(講談社)が好きなんですが、全然タイプの違う四人の女の子を書かれているじゃないですか。ご自分とどこか似ている部分はありますか?

河合

どこかしら入ってますけど、でも過去に出会ってきたいろいろな人たちが混じり合った中に、自分の一部が入っている、といった感じですかね。しるこさんは、この作品を書きながら、思い入れや親近感を持ったキャラクターっていましたか?

戸森

うーん。私も少しずつ混じっている感じです。書いていて、いちばん楽しかったのは、まりもですね。自分といちばん似ていないけど、憧れる感じの女の子かもしれないです。でも、友達になりたいのは、籾山(もみやま)かな。

戸森さんが書いていて楽しかったという森まりも(左)のイラスト/p83扉絵より 画像
戸森さんが書いていて楽しかったという森まりも(左)のイラスト/p83扉絵より

(この対談の全文は、2023年10月25日発売予定の「飛ぶ教室」75号に掲載予定です) 

戸森しるこ(ともり・しるこ)

児童文学作家

1984年埼玉県生まれ。児童文学作家。『ぼくたちのリアル』で講談社児童文学新人賞、児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞。『ゆかいな床井くん』で野間児童文芸賞受賞。

河合二湖(かわい・にこ)

作家

1977年、山口県生まれ。作家。『バターサンドの夜、人魚の町で』で、講談社児童文学新人賞を受賞、同作(『バターサンドの夜』と改題)でデビュー。

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