
道徳科実践レポート
2023年11月6日 更新
濱島 功 神奈川県小田原市立芦子小学校 教頭
光村図書「どうとく3 きみが いちばん ひかるとき」より、「黄金の魚」の実践をしました。
教材の内容
内容項目
A(3)節度、節制
ねらい
節度のある生活のよさを考え、節制しようとする気持ちを育む。
あらすじ
おじいさんは海で釣り上げた黄金の魚に、どんな願いでもかなえるから助けてほしいと言われる。おじいさんは何も望まずに魚を助けるが、話を聞いたおばあさんは、魚に願いをかなえてもらうようおじいさんに言う。おばあさんは願いがかなってぜいたくな暮らしができるようになっても、次々に新しい願い事をしたので、魚は願いをかなえることをやめ、おばあさんの暮らしも元に戻る。
わたしの授業、ポイントはココ!
「道徳見つけ」から問いをもつ
「子どもと創る道徳授業」を目ざす中で、特に子どもが「自ら問いをもつ」にはどうすればよいのかについて、日々模索しています。いろいろな方法を試してきましたが、現在のところ、「子どもたち自身で教材から道徳を発見する学習方法」が効果的だと考えています。私は、それを「道徳見つけ」とよんでいます。
具体的には、まず、教材を読んで、各自で、自分の心が動いたと思うところを見つけます。その後、ペアトークを行い、全体でも共有する時間を設けます。教師が「どうしてそう思ったの?」と聞き返すことによって、子どもたちの感じた「道徳」を引き出すことができます。このような手続きを経て、発問につなげることで、発問に対する子どもの思考が深くなります。「道徳見つけ」がベースとなり、子どもが問いを生み出すことができるのです。
※「道徳見つけ」の実践は、丸岡慎弥先生(立命館小学校)の実践を参考にしました。
発問に選択肢を設ける
学習過程に子どもが「選択できる」場面を設けることを意識しています。選択肢のある発問をすることによって、児童は参加しやすくなり、「考え・議論する」ことにつなげることができます。
授業をのぞいてみよう
発問
普段の生活で、家の人とどんな約束をしていますか。
- YouTubeを見ることができる時間が1時間までというのが、お母さんとの約束だけど、ついつい5時間ぐらい見てしまった。でも、代わりにゲームができる時間が「0」になってしまうと、つまらない。
やりすぎは、よくないよね。でも、楽しみを設けず過ごすのもつまらないね。では、「ちょうどよい・ほどよい」感じってどういうことなんだろうね。教科書の内容を通して考えてみよう。
指導の工夫
教材の内容項目・教師のねらい・児童の実態を踏まえた話題提供をし、日頃の自分の生活を振り返る場面を設定した。
発問
今からお話を読みます。自分の心が動いたなと思うところに線を引きましょう。いいなと思ったら、線を引いてその横に○を、よくないなと思ったら×を付けます。よいのか、よくないのかわからない場合には△を付けましょう。
- ×おばあさんが、「金持ちになりたい・海の女王になりたい」と言って、欲張っている。
- △おじいさんがおばあさんの言いなりになっている。
指導の工夫
「道徳見つけ」を通して、自分の経験を踏まえながら語らせるとともに、「子どもからの問い」を引き出せるように板書して、内容を整理する。「道徳見つけ」から、本時で扱う内容項目に関する問いが、自然と子どもたちから引き出せるようにした。
中心的な発問
おばあさんの願いはどこまでだったら理解できますか。
A.おけ、B.立派な家・金持ち、C.海の女王・黄金の魚を家来、Z.その他(何ももらわない・仕事の紹介)
- 立派な家はもらいすぎだよ。何か仕事を紹介してもらうくらいがちょうどいい。
- 家をもらうまでだったらいいんじゃないかな。だって、黄金の魚も受け入れているから。
指導の工夫
「道徳見つけ」を基にして、選択的発問を提示した。この問いは、誰もが参加でき、議論もしやすくなる。また、私が3択ほど提示し、さらに子どもからも選択肢(Z.その他)を募り、話し合いを行った。
発問
黄金の魚は、海の底に隠れる前におじいさんに何と言ったでしょうか。
- 人の言いなりにならないためにも、「ここまで」という一定のルールを自分自身でもっていることが大切だよ。
- 人に合わせすぎるのもよくないよ。
指導の工夫
おじいさんは「節度」はあるが、押しに弱いのか、おばあさんに強く言われると聞いてしまう。おじいさんの言動についても検討することによって「節制」についても考えられる授業展開をねらった。
発問
「ちょうどよいとは……」「ちょうどいい感じに過ごすには……」の続きを書き、わかったこと・考えたことをまとめましょう。
- ちょうどよいとは、ある程度満足できたらそこでやめること。
- ちょうどいい感じに過ごすには、自分のルールを守ろうとする気持ちをもつとよい。
指導の工夫
本時は「価値理解」を重視した授業にしたため、道徳的価値のよさや大切さを確認できるよう、導入で提示した視点に基づいて振り返りをした。
※この実践は2022年6月に行われたものです。
ココに注目!
主体的な学びの実現に向けて、道徳科の授業や教材を「自分ごと」にすることは、とても重要です。本実践では、教材から感じたことを教科書に書き込むことで、本時の学習への問題意識を高めておられます。また、選択肢のある発問は対話的な学びの実現へとつながります。多くの先生方から、「意見の交流はできても、議論になかなかならない」という声も聞かれます。議論を生み出すには「論点」が重要です。「選択肢」は選択の理由も含めて、友達との差異が明確になりやすく、議論を生み出す工夫として有効です。
関西福祉大学 教授 新川靖
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