
2023年2月10日 更新
朝倉 喩美子 元練馬区立光和小学校統括校長
道徳科の学習は、自分の率直な思いや、生まれた考えを伝え合うところから始まります。心を開いて自分自身を語るには、教師と子ども、子どもどうしの「信頼関係に基づく雰囲気」が大事です。一朝一夕にはできない雰囲気づくり、それは日頃の学級経営から生まれます。
学級経営を円滑にするために、クラスの雰囲気づくり、温かい人間関係の育成、言葉の大切さ、話し合いの学習技能について考えていきましょう。
クラスの雰囲気をつくる
クラスの雰囲気をつくるとき、心に留めておくとよい考えとして、「1×1×1×……=∞」があります。無限大の可能性をもつ一人一人の集合は、無限大の可能性をもつという考えです。大事なことは、一人が欠けると「0」になってしまうということです。
「みんなのクラス」を意識化するには、メインシンボルを決めたり、子どもの文化を取り入れたりするとよいでしょう。
メインシンボルを決める
クラスのシンボルを作ると、子どもたちがクラスのイメージを一つにすることができます。
例)クラスの木、クラスの旗、宇宙船○○号など

クラスの目標を掲げる
目標を立てるだけではなく、教室の前方に掲げるとよいでしょう。目標を立てるときは、次の点に留意しましょう。
・わかりやすく、リズミカルで覚えやすい表現にする。
・クラス全員が関わって魅力的なポスターにする
クラスの足跡を残す
事あるごとに記念写真を撮ったり、コメントを掲示したりしましょう。クラスの足跡が、みんなの大事な歴史となります。

(学級会で決めたこと)
子どもの文化をあちこちに
子どもたちは、楽しい名前を付けるのが上手です。「ハチャメチャお笑い係」「週刊子ども川柳」「株式会社プリント出前」など、子どもの発想でネーミングした係は、楽しいのはもちろん、自分たちで決めたものとして、主体的に係活動をするようになります。
ポスターなど係活動の産物は、教室に美しく貼り、クラスの雰囲気づくりに役立てましょう。
温かい人間関係を育む
クラスをつくっていくことの基本として、人間関係づくりが重要です。温かい人間関係の根底には、「違うからこそおもしろい」という考え方が大事です。思いやりの根本は相手意識です。日常的に「相手」や「みんな」を意識させるようにしましょう。
子どもたちが何気なく見せている優しさや続けている努力、素敵な関わりの姿を見落とさずに把握し、全体に紹介していきましょう。

クラスづくり
言葉を大事にする
人と人との関わりにおいて、言葉によるコミュニケーションは大切なものの一つです。相手の理解を得たり、相手を説得したり、慰めたりするなどの表現のしかたは、自然に習得できるものばかりではありません。子どもたちにその都度教えるとよいでしょう。言葉を大事にし、表現の枠を広げていけるような活動を紹介します。
珠玉の一言
子どもの発した言葉の中で印象的な輝く言葉を、教師がカードに書いて、クラスで紹介する活動です。紹介することで、その言葉を価値づけることにつながります。「いいこと100%の日」「幸せ辛めに響くカレー」「その一言が目にしみる」「今日は1年に説教された説教記念日」「あと千年はだいじょうぶ」など、しゃれた言い方やうまい励ましなどを、紹介していきます。
ちょいちょいメッセージ
日直のスピーチの内容や意見発表などを掲示しているクラスも多いでしょう。その掲示物に対して、褒め言葉を中心にした感想を書いた付箋を貼っていく活動です。この活動をすると、友達のよいところを見つけやすくなります。また、友達からメッセージをもらうことの喜びも味わうことができます。
今月の詩(写真、出来事)
詩や歌、新聞記事や写真などを掲示します。紹介する詩や歌を選ぶときは、道徳の内容項目に関連するものから、新聞記事や写真は、「現代的な課題」に関連するものから選ぶとよいでしょう。よい詩や歌は、心に響くものです。また、新聞記事や写真は、無言のうちに考えさせる力があります。子どもたちが図書館などで見つけた印象的な詩などを掲示するのもいいでしょう。
話し合い、語り合い、討論など学習技能を磨く
話し合いや語り合い、討論などの学習技能を、計画的に、また段階的に磨いていくことによって、意思の疎通ができ、道徳の学習はもちろん、各教科の学習が進めやすくなります。そして、学級の雰囲気も明るく前向きなものになります。
話し合い、語り合いで大事なことは、相手が何を考え何を伝えたいのかを、興味をもって聞くことです。人は、相手が話を聞いて受け止めてくれることがわかると、話しやすくなるものです。まずは、話し手に体を向け、笑顔でうなずきながら話を聞く姿勢を習慣づけるとよいでしょう。
また、意見交流の質を高めることも大切です。人と違う意見、視点を変える意見、自分の思いや考えを加える意見を評価していきましょう。そして、形容詞、形容動詞、副詞の使い方や、類語の活用などを紹介して語彙を増やしていくことで表現力を向上させることができます。
話し合いの人数や形態を変化させることで、多面的・多角的な検討をねらった活動を楽しく経験させましょう。
これらを通して、話し合い、語り合い、討論などの学習技能は磨かれていきます。コミュニケーション(情報交換、情報の収集と選択、受信と発信)、コラボレーション(いっしょに課題に取り組む、協働する)、イノベーション(話し合うことで新たな見地を得る)の「3つのション」を意識して、全教育活動の中で指導していきましょう。