みつむら web magazine

図書館へ行こう! 第2回

図書館へ行こう!

2017年10月18日 更新

猪谷 千香 文筆家

図書館の最前線を知る筆者が全国の「子どもが集まる図書館」を訪ね、その魅力を紹介します。

猪谷千香(いがや・ちか)

東京都生まれ。明治大学大学院博士前期課程考古学専修修了。産経新聞で長野支局記者、文化部記者などを経た後、ニコニコ動画やハフィントン・ポスト日本版の記者として活動。2017年9月から弁護士ドットコムニュースの記者として取材を続ける。著書に、『つながる図書館』(ちくま新書)、『町の未来をこの手でつくる』(幻冬舎)など。

 第2回 「子どもの声は未来の声」
――岐阜市立中央図書館

図書館では、静かにしないといけない。
そう思うと、子連れで出かけるのをためらったり、出かけたとしてもすぐに本だけ借りて帰ったり。子どもが生まれたら、ついつい図書館から足が遠のいてしまった……。

そんな経験をお持ちの方々に、ぜひ紹介したい図書館がある。複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」に併設された岐阜市立中央図書館だ。

2015年7月にオープンして以来、地元で人気が高く、年間利用者は100万人を超える。岐阜市の人口が約41万2000人(2017年9月現在)であることを考えれば、とても高い利用率といえる。その秘密は、子育て世代や子どもの多さだ。吉成信夫館長によると、以前の市立図書館に比べ、40代以下の利用がおよそ3割から6割に伸びたという。

一体、どんな図書館なのか。実際に訪れてみると、まず建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を受賞した建築家、伊東豊雄によるダイナミックな構造の建物に度肝を抜かれる。市民活動交流センターや展示ギャラリーも入る複合施設で、2階にある図書館のフロアに上がると、壁のない開放感のある空間に迎えられる。

画像、岐阜市立中央図書館

天井からは大きな円形の天蓋が下がり、まるで遊牧民のテントのよう。その下には、レファレンスカウンターや展示スペースといった各コーナーが配置され、「グローブ」と呼ばれていた。吉成館長が「すべてはここから始まっています」と、真っ先に案内してくださったのが、その一つ、「親子のグローブ」だった。

画像、岐阜市立中央図書館

まあるいこのグローブは、芝生を思わせるグリーンのカーペットが敷き詰められ、なだらかな起伏があるコーナーになっていた。文字通り、親子連れが裸足でゴロゴロとできるのだ。子どもに絵本を読み聞かせている女性もいれば、寝そべって本をめくっている子どももいる。図書館とは思えない光景が広がっていた。

ふと壁に目をやると、こんな文言が飛び込んできた。それは、「子どもの声は未来の声」と題され、「私たちの図書館では、本を通じて子どもたちの豊かな未来へとつながる道を応援したいと考えています。」という一文で始まっていた。

子どもたちの成長を末永く見守る場所でありたいという理由から、「館内で小さなお子さまが少しざわざわしていたとしても、微笑ましく親御さんたちといっしょに見守ります」と言い切り、「来館されたみなさまも、どうぞそのような考え方をもった図書館だとご理解いただければありがたいです」とお願いしている。
子どもの声がなるべく大人たちのフロアに聞こえないよう、ゾーニングの工夫をしている図書館はよくあるが、子どもの声を騒音ではなく、「未来の声」ときちんと言葉にして、伝えてくれる図書館はここが初めてだった。そうして、気兼ねなくのびのびと過ごせる図書館を核として、ぎふメディアコスモスはいつも大勢の親子連れや子どもたちであふれている。

もちろん、子どもたちがうるさく騒いでいるわけではない。文言には親に向けたメッセージも続いていた。今度は、親に向けて「ここは公共の場です。遊び場、運動場ではありません」「公共の場所でのマナーをお子さまに教えていただく場としてもご活用いただければ幸いです」。

ここは、子どもが集まるだけでなく、地域で一緒に子どもを見守り、育てようとする場でもあった。ぜひ、「子どもの声は未来の声」という言葉が、全国の図書館にも広がってくれるよう、願っている。

岐阜市立中央図書館(ぎふメディアコスモス)

〒500-8076 岐阜県岐阜市司町40番地5
TEL:058-262-2924

【開館時間】9:00~20:00
【休館日】毎月最終火曜日・年末年始

Photo: 岐阜市立中央図書館

次回は、武蔵野プレイス(東京都)を紹介します。

 

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集