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2018年8月31日 更新
如月 かずさ 児童文学作家
いつもどおりの、けれど誰かにとっては特別な給食――やさしく胸に響くアンサンブルストーリー。
スペシャル対談「ぼくらの給食、みんなの給食」 如月かずさ×五十嵐大介 [前編]
給食をテーマに、中学生の揺れ動く心や変化を描いた連作短編集『給食アンサンブル』。この作品の作者である如月かずささんと、連載時より絵をご担当いただいている五十嵐大介さんによる対談を、2回にわたりお届けします。
前編は、お二人の給食の思い出や中学生時代のこと。
給食の思い出、給食時間の思い出
如月 給食は好きだったのですが、苦手なメニューも多かったです。思い出すのは、納豆のことですね。私は納豆が大の苦手で、給食に納豆が出ると教室にすらいられなくて、廊下に一人机を運んで食べたこともありました。それで先生に怒られたりもしましたね。
五十嵐 納豆って給食に出ましたか?
如月 はい、1か月に1回くらい。カレーライスと同じ頻度で出ていたと思います。
五十嵐 ぼくの給食には出た記憶がないなあ。出身はどちらですか?
如月 群馬県の桐生市です。特に納豆が名産というわけでもないんですけどね。献立表が配られるたびに、納豆の出る日を見つけては「嫌だなあ」って。
あと、給食時間の思い出ということでいえば、放送ですね。放送委員だったので、給食時間に流すテレビ番組を作っていたんです。
五十嵐 へえ、テレビ番組。音だけの放送じゃないんですね。
如月 はい。その放送のために、校内腕相撲大会を企画したり、落語のできる友達に落語を話してもらったりしていました。
五十嵐 映像に合わせる音楽を自分たちで選曲したりは?
如月 いや、技術的に音楽はつけられなくて、ひたすら映像を流しているだけでした(笑)。
五十嵐 (笑)。ぼくのほうは、音楽が流れる程度の給食時間でした。
五十嵐 地域や年代によって、給食のメニューや給食時間は違いますね。
如月 そうですね。今回の『給食アンサンブル』を書くにあたって、全国の中学校の献立表を見られるだけ見たんですけど、私の頃の給食と同じところもあれば、違うところもいろいろありました。
私の頃はトーストしていない食パンにジャムをつけて食べていたんですが、最近の給食ではあんまり出ないみたいです。
五十嵐 そうなんですか。
如月 そのかわりに、コッペパンやご飯が主流のようです。
海外のメニューも、積極的に取り入れているようですね。チャプチェとか、ひよこ豆の料理なんかもあって、バラエティ豊か。
五十嵐 ぼくの子どもが通っている小学校にも、「世界の給食の日」というのがありますよ。おもしろいですよね。他文化を知ることや食育の一環なんでしょうね。
如月さんのときは、なにか給食ならではのメニューって、ありました? 給食でしか食べたことないものとか?
如月 『給食アンサンブル』にも出てくる「ABCスープ」がそうですね。
五十嵐 ぼくは給食でも食べたことがないなあ。
如月 「ABCスープ」は全国のいくつかの地域で見られた献立だったのでメニューの一つとして取り上げましたが、地域差はありますね。
五十嵐さんにとっての給食ならではといえば?
五十嵐 小学校の給食のときに時々出ていた「みそおでん」ですね。
如月 「みそおでん」? どんなものなんですか?
五十嵐 こんにゃくとか人参とか鶏肉といったいろんな具が、みそで煮てあるという、いわゆる煮物です。ちょっと甘めの味付けですごく好きだったので、うちでリクエストして作ってもらったりしていたんですよ。
「みそおでん」、食べてみたいですね。如月さんの好きだった給食は?
如月 実は、『給食アンサンブル』でテーマにした6品は、すべて好きなメニューなんですよ。
「今」につながるきっかけ
「七夕ゼリー」「マーボー豆腐」「黒糖パン」「ABCスープ」「ミルメーク」「卒業メニュー」ですね。これが6話分のテーマとなって「飛ぶ教室」で連載。そして、今回1冊の単行本となったわけですが、五十嵐さん、通して読まれていかがでしたか?
五十嵐 それぞれの話が間をおかずにつながりで読める分、連載時とはまた感じ方が違って、おもしろかったです。6話それぞれの主人公は、自分とは違うんだけど、それぞれに感情移入できて、楽しい体験でした。
それと、ぼくは中学時代、何も考えずに過ごしていたので、この子たち、すごいなあとも思いました。
如月 何も考えず? そうなんですか?
五十嵐 日々ただ与えられた状況に対応しているだけで、自分から積極的に何かするという感じでは生きていなかったですね。まあ、忘れているだけで当時は考えていたのかもしれないけれど。
中学時代で言えることとしては、「ルパン三世」の『カリオストロの城』と、友達に何か月もしつこく薦められたことで観た「うる星やつら」の『ビューティフルドリーマー』。このときこのふたつの映画に出会ったことで、道を踏み外したんじゃないかなと(笑)。
如月 (笑)。
五十嵐 そんな今の方向へのきっかけはあったものの、自我が芽生えて、いろいろ自分でやるようになってきたのは、もっと大人になってから。なので、『給食アンサンブル』の子どもたちは、ちゃんとものを考えていて偉いなあって思いますよ。「自分は子どもっぽい」と悩む、第2話の主人公・桃も、十分大人だと思います。
たしかに。一方で、如月さんの中学時代はどんな感じでしたか?
如月 私は勉強が得意だったので、スポーツを好きな子が大会でいい順位を目指すみたいに、テストでいい点を取るぞと頑張っていました。それは、第5話の「ミルメーク」の主人公・清野と同じで、高得点を取るのが面白いからで。
中学の後半からは読書を本格的にするようになって、面白い本に出会ったことがきっかけで、自分もこういう小説が書きたい、という思いが強くなっていったんです。そうしたら、3年生の時、授業の中で文集のようなものをつくる機会があって、そこでいくつか作品を書きました。週に1時間の選択授業に国語を選択したら、先生が熱心な方で、「このメンバーで作品集を作ろう」となって。手作りながら装丁にも凝ったりして面白くて、年に1冊のはずが、3冊も……。
五十嵐 素晴らしい。
如月 中学3年生の12月に第2集、3月に第3集を出して、「受験は大丈夫なのか!?」という感じでしたけど、そのおかげで書くのが大好きになって、今の道です。私も五十嵐さんと同じく、ひとつの大きなきっかけが中学時代にありました。
五十嵐 いいですね、そういう授業。
でもぼくの場合は、自我の芽生えは本当に最近の事ですから。今につながるきっかけはあっても、学生時代に何かに一生懸命取り組んだとか、自分から積極的に何かしたことは本当になくて。
如月 私も「文集」のように、目の前に何か目標ができれば動くんですけど、そうでなければ自ら動くという感じではなかったですね。
五十嵐 締め切りがないと何も描かないのと同じですね。偉大ですね、締め切りは(笑)。
如月 本当、偉大です(笑)。
如月かずさ(きさらぎ・かずさ)
1983年群馬県生まれ。児童文学作家。
五十嵐大介(いがらし・だいすけ)
1969年埼玉県生まれ。漫画家。
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