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質問14 道徳における「アクティブ・ラーニング」って、どうすればいいの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

「アクティブ・ラーニング」という言葉が一般的に使われるようになったのは、2012(平成24)年8月の中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」《質的転換答申》で示されるようになってからです。「従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」と述べられ、アクティブ・ラーニングの重要性が指摘されました。もともとは、高等教育に内在している課題解決のためにアクティブ・ラーニングが提唱されたわけです。

アクティブ・ラーニング(active learning)は能動的な学修を意味し、その対義語のパッシブ・ラーニング(passive learning)は受動的な学修を意味します。このように対義語との関係で捉えていくと、アクティブ・ラーニングは自主的、主体的な学修であることがわかります。ただ、アクティブ(active)という意味や語感からどうしても、活動的な、活発なというイメージを抱きやすい傾向があります。本来、自律的で深い学びであるはずのアクティブ・ラーニングが、表層的な活動と受け取られかねない可能性があり、「活動あって学びなし」の印象を与えてしまう懸念があります。このようなことから、アクティブ・ラーニングという言葉はやや後退した形となり、新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニングの視点)のように表現されています。

では、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニングの視点)を道徳科でどのように生かしていけばいいのでしょうか。2016(平成28)年8月の中教審「審議まとめ」から、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」それぞれについて考えてみましょう。

1. 道徳科における「主体的な学び」の視点から

児童生徒が課題意識をもち、自分を見つめ、道徳的価値を自分自身との関わりで捉え、自己の生き方について考える学習としていくことです。例えば、各教科で学んだことや体験したことから道徳的価値に関して考えたことや感じたことを振り返り、自分が成長したことを実感したり、これからの課題や目標を見つけたりすることができるようにすることです。

2. 道徳科における「対話的な学び」の視点から

児童生徒相互の対話、教職員や地域の人々との対話、先哲の考え方など、これらのことを手がかりに考えを深めていく学習としていくことです。加えて、自分と異なる意見と向き合い議論をすることや、道徳的価値の葛藤や衝突が生じる場面で、多面的・多角的に議論をすることなどが考えらます。

3. 道徳科における「深い学び」の視点から

道徳的諸価値の理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方について考える学習を通して、さまざまな場面、状況において、道徳的価値を実現するための問題状況を把握し、適切な行為を主体的に選択し、実践できるような資質・能力を育成する学習としていくことです。例えば、登場人物の心情理解のみにとどまらず、道徳的問題を自分のこととして捉え、議論し、探究する過程を重視し、道徳的価値に関わる自分の考え方、感じ方をより深めることなどが考えられます。

この「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニングの視点)は、新しい学習指導要領における学習活動「どのように学ぶのか」の基本となるものであり、先行的に実施する道徳科はその先駆けとなります。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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