みつむら web magazine

質問20 「中心発問」って、どうやって決めればいいの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

「中心発問」は、1時間の道徳科の授業で、ねらいに迫るための決め手となる発問です。道徳科が道徳教育の要であるように、中心発問は道徳科の要であるといえるでしょう。では、中心発問はどのように決めたらよいのでしょう。

教材中には、必ず道徳的問題が生起します。もし、道徳的問題が教材中に含まれていないとすれば、道徳的な議論はできませんので、そのような教材は道徳科の教材としては不適といえます。

道徳科の教材中には、道徳的問題が生じて、主人公(登場人物)が考えたり悩んだりするような場面が含まれています。そして、主人公は道徳的問題に直面して、道徳的決断をしたり、心に道徳的変化が生じたりします。このときの、主人公の道徳的決断や変化に注目してください。この時点で、主人公は道徳的価値を自覚していると考えられますので、この部分を中心発問として設定します。「主人公の決断はどのような理由によるものなのか?」「主人公は何に気がついたのか?」等を問うことで、ねらいに迫ることができるでしょう。

具体例として、小学校高学年の「手品師」を使用した場合で考えてみましょう。手品師は、友人の誘いを受け劇場に行くべきか、約束した子供の前で手品を披露するべきかで悩みます。そして、悩みに悩んだあげく、決然として友人の誘いを断り、一人だけのお客さんである子供の前で手品をします。「手品師は、受話器を持ちかえると、きっぱりと言いました。『せっかくだけど、あしたは行けない』。」とあり、ここで、手品師が決断したと思われます。自分の夢でもあった大劇場への出演を断り、子供の前に立った手品師の決断の理由やその思いを考え、語り合うことでねらいに迫ることができると思います。

このような道徳的決断や変化が生じる場面は、比較的ストーリーの後半の部分に多いように思われます。物語の「起承転結」から考えても、構成上、山場は後半にある傾向があります。このような構造を理解していれば、中心発問の設定もしやすいでしょう。

ここに挙げた事例は全ての教材に当てはまることではありませんが、中心発問設定の一つの方法です。中心発問が決まれば、他の基本発問は中心発問までに至るまでの発問となりますので、指導過程も構想しやすいと思われます。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集