山崎先生の
授業アイデア
山崎 正明
北翔大学教授
日々の美術の授業に役立つ,さまざまなアイデアをご紹介します。
山崎正明(やまざき・まさあき)
1957年北海道生まれ。北翔大学教授,元千歳市立北斗中学校教諭。北海道教育大学札幌校卒業。埼玉県で講師を務めた後,北海道の公立中学校教諭に。自身のブログ「美術と自然と教育と」で,授業実践や生徒作品などを紹介している。光村図書中学校『美術』教科書の編集委員でもある。
第4回 「美術室づくり」の工夫(2)
2016.07.21
前回(第3回)に引き続き,私の「美術室づくり」の工夫をご紹介します。
4. 資料室としての機能をもたせる
私は,さまざまな資料を美術室に置いています。
画集は,大型のものと気軽に手に取れるものの両方を置くようにしています。また,「画集を見る時間」も設けて,美術に関する本は,どのようなものがあるのかを教えるようにします。すると,生徒たちは,画家に興味をもつようになったり,表現に取り組んでいるときに画集を開いて参考にしたりするようになります。
技法に関する書籍は,生徒が表現方法を自分で選択する場面で有効ですので,種類をそろえて置いておくようにします。
また,図鑑や他教科の教科書・資料集も置いておくとよいと思います。授業で適宜活用することで,美術はいろいろな世界とつながっていることを感じ取らせることができるからです。題材によっては,図書館の本を一時的に借りてきて,並べておくのもよいでしょう。
美術室の一角に資料を並べておき,生徒が自由に見られるようにしておく。
資料を準備しておくのは大事なことですが,生徒が資料収集を教師に頼りすぎないよう配慮しましょう。美術室で出会った資料がきっかけとなり,使いたい資料を自分自身で探して見つけられるようになることが望ましいと考えます。生徒の求めるものが美術室だけで完結しないことも,学び続けるという視点から大事だと思います。
5. ギャラリーとしての機能をもたせる
私は,生徒たちが学校や家で何気なく描いたりつくったりしたものを,美術室に展示するようにしています。絵を描いたり,ものをつくったりすることは,話すことと同じように自然なのだと生徒たちに感じ取ってほしいという願いからです。
生徒が気軽に描いた絵などを美術室の至る所に展示する。
また,生徒の制作途中の作品も展示するようにしています。それらを見て,生徒たちは自分の表現へ取り入れようとし,自然と学び合いが起こります。
それから,空き教室などを利用して,美術室以外の場所に美術館のような空間を設けても,おもしろいでしょう。下の写真は,使われなくなった放送室に名画を展示したときのものです。美術室のようなにぎやかな空間でなく,このような静かな場所で作品とゆっくり向き合うのもよいのではないでしょうか。このときの展示は,生徒だけではなく先生や保護者も興味をもってくれたようでした。
空き教室を利用して,美術館ふうに名画を展示した。
6. 開かれた美術室に
美術室は,学級や学校行事の掲示物をつくるときなどに,生徒が自由に使えるようにしています。マーカーや色鉛筆,色画用紙はもちろん,透明水彩絵の具セットも,自由に使わせています。美術室に来れば,さまざまな用具や材料がありますから,生徒たちのアイデアも膨らむことでしょう。
なにより美術室で活動することで,美術で学んだことが日常の場面に生かされていることを,生徒自身が感じるようになります。開かれた美術室が,生徒の美術の学びを日常につなげてくれるのです。
以上,私の「美術室づくり」のポイントを六つご紹介しました。
これまで中学校で美術を教えてきて,生徒たちの創作意欲を高めるために環境づくりがいかに大事かということを痛感してきました。工夫次第で,美術室は、生徒たちが「もっと描きたい!もっとつくりたい!」と思えるような空間に変えることができます。生徒や学校の実態に合わせて,ぜひチャレンジしてみてください。
次回は,生徒作品を展示するときに大事にしたいことをご紹介します。
目次
【第1回】 「自己評価」を授業づくりに生かす <2016.04.18>
【第2回】 「描く楽しみ」を味わう授業 <2016.06.01>
【第3回】 「美術室づくり」の工夫(1) <2016.07.14>
【第4回】 「美術室づくり」の工夫(2) <2016.07.21>
【第5回】 作品展示で大事にしたいこと <2016.09.07>
【第7回】 「存在証明」としての自画像 <2016.10.20>
【第8回】 他教科とのつながりを意識する――技術科との連携 <2016.11.30>
【第9回】 「対話による美術鑑賞」のすすめ <2016.12.27>
【第10回】 よりよい授業のために <2018.01.09>
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くるくる回る風車と一緒に,光村図書の歴史をたどります。