山崎先生の授業アイデア
2016年12月27日 更新
山崎 正明 北翔大学教授
日々の美術の授業に役立つ、さまざまなアイデアをご紹介します。
第9回 「対話による美術鑑賞」のすすめ
私が、鑑賞の授業の中で力を入れて取り組んで、そのよさを実感しているのが「対話による美術鑑賞」です。「対話による美術鑑賞」とは、作品に対する自分の見方、感じ方や考え方を、対話を通して深めたり広げたりしながら、集団で意味生成していくことです。
具体的な鑑賞の方法については、光村図書ウェブサイトの「はじめよう、対話による鑑賞の授業」をご覧ください(下参照)。「対話による鑑賞の授業」に適した作品の紹介や、教師のファシリテーションのしかた、評価のしかたなどが詳しく紹介されています。
生徒自身が主体的に発言をし、対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく「対話による鑑賞授業」について、上野行一先生が詳しく解説します。
実は以前、私が行っていたいわゆる「対話型鑑賞」では、活発に発表させることばかりに気をとられ、メモをもとにした発表や機械的な指名による発表をさせていました。しかし、それでは、どうしても一人一人の感想の羅列になってしまい、発表は教師に向けられたものになりがちでした。
そうしたなか「対話による意味生成的な美術鑑賞」という考え方に出会いました。この方法では生徒どうしの対話が生まれ、一人一人の感じ方や考え方の違いをよさやおもしろさとして実感しながら、自己の鑑賞を深めていくことができるようになります。
こうした体験を積み重ねていくと、生徒たちが互いに受容的になり、自分と違う意見をおもしろがれる雰囲気が学級の中に生まれます。おのずと表現の授業も変わってきます。
また、「対話による美術鑑賞」は、道徳の授業でも生かすことができます。
実は以前、道徳授業の校内研修の中で、私の「対話による美術鑑賞」の授業を公開しました。ご覧になった先生方は、生徒たちが意欲的に自分の考えを述べている姿や、多様な意見や考えを認めながら自分の価値意識を深めていく様子を見て、驚いていました。そしてその後、校内の道徳の授業改善へとつながっていきました。
私は、「対話による美術鑑賞」に出会ってから、生徒の捉え方が変わってきました。生徒の感じ方や考え方にふれることがおもしろくなり、私自身の感じ方や考え方も豊かになったと思います。
これを読まれたみなさんの中で「対話による美術鑑賞」をまだ試みていない方がいらっしゃるなら、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。
次回は、いよいよ最終回です。
山崎正明(やまざき・まさあき)
1957年北海道生まれ。北翔大学教授、元千歳市立北斗中学校教諭。北海道教育大学札幌校卒業。埼玉県で講師を務めた後、北海道の公立中学校教諭に。自身のブログ「美術と自然と教育と」で、授業実践や生徒作品などを紹介している。光村図書中学校『美術』教科書の編集委員でもある。