
美術の授業お悩み相談室
2020年3月5日 更新
上野 行一 元高知大学大学院教授
授業のお悩み、一人で抱え込んではいませんか? 美術教育の専門家、上野先生が温かく受け止めます。
第6回 授業時間が足りない!
A 制作が中途半端になる原因に応じて、授業計画と学習形態を改善しましょう。
特に表現の授業では、制作の準備や後片づけをしなければなりませんので、50分があっという間に感じられるかもしれません。
もし制作に時間がかかるのであれば、作品サイズを小さくするとか、扱いやすい材料・用具に替えるとか、もっと短時間で終わるような工夫ができるかもしれません。
また、美術の授業では、一つの題材に集中的に時間をかけるよりも、なるべく多くの題材から学ばせることが大事です。さまざまな表現形式や表現方法、材料や用具の扱いを経験することは美術を広く捉えることにつながり、また自分にとって相性のいい表現の仕方を見つけることにもつながります。一つの題材にいくつもの学習内容を組み込むと時間もかかりますが、題材で育成する資質・能力を絞り込むことで指導のスリム化を図れます。
発想や構想に時間がかかる場合は、発想を広げるための思考ツールや、ポートフォリオを活用しましょう。ポートフォリオに記述した思いや考えを読み返すことで、自分があらわしたいことや主題に関わる思索の経過を振り返ることができ、生徒が見通しをもって取り組むことができます。結果として時間は短縮されるでしょう。
3月下旬公開予定の第7回(最終回)は、「完成した生徒作品、どう展示したらよい?」というお悩みにお答えします。
Illustration: 北村人
上野 行一(うえの・こういち)
「美術による学び研究会」会長。高知大学大学院教育学研究科教授、帝京科学大学教授を務める。『私の中の自由な美術』、『風神雷神はなぜ笑っているのか』(光村図書)など著書多数。NHK高校講座「芸術(美術Ⅰ)」を監修。光村図書中学校「美術」教科書の著作者でもある。