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第6回 教科書の配送のひみつ

教科書づくりの現場から

2026年5月8日 更新

1冊の教科書の向こうには、たくさんのつくり手たちの仕事や思いが存在します。教科書ができあがり、届けられるまでの現場を取材しました。

4月になると、いつも当たり前に手元に届く教科書。
第5回   では、発送前に行う検査についてご紹介しました。
次はいよいよ、全国の子どもたち一人一人の手元に教科書を届ける段階です。
膨大な物量となる教科書を、遅れなく、傷なく配布するために、どのような配慮や工夫がされているのでしょうか。
前回に続き、小・中学校の教科書の検査や配送を担ってくださっている教発株式会社を訪れて、そのひみつを教えてもらいました。
 

教えてくださった方

杉山さんのプロフィール画像

杉山 玲司 さん

教発株式会社 業務管理課

教科書供給業務に従事して20年。好きな給食のメニューはソフト麺。息子が中学校で過ごす最後の1年間、PTA会長を務めたのはかけがえのない経験。以後地域の活動に積極的に参加し、子どもたちを見守っている。

中山さんのプロフィール画像

中山 隆 さん

教発株式会社 発送課

発送業務に25年携わる。小・中学校時代に好きだった教科は歴史。自分が仕事を教えた派遣社員さんを我が子のように思っていて、彼らの成長が目に見えることにやりがいを感じる。オフのときは家族でちいかわグッズ収集を楽しむ。

「完全供給」のしくみ

教科書発行者は、作った教科書を、新学期が始まるまでに全国の学校に届ける責任があります。
教発株式会社は、小・中学校の教科書の発送計画から梱包・出荷までの業務を担い、この「完全供給」を支えています。
1年間に出荷する教科書の部数は、小中合わせて1,900万冊を超えます。
膨大な量の教科書を、間違いなく、傷なく届けるために、現場ではさまざまな工夫がなされています。

発送業務は、大きく
1.    受注・発送計画
2.    梱包
3.    出荷
の工程に分かれています。
 

1. 受注・発送計画

教科書の発送の大きな特徴の一つが、製造ロットを管理・記録していることです。
教科書が学校に届いた後で不備が見つかったときに、いつ作られたものなのか、どの範囲に発送したのかなどをたどることができるようになっています。

3月、4月は児童・生徒の転出・転入が多く、各学校で必要になる部数はギリギリまで変動するので、発送計画も軌道修正が必要になります。
期日までに過不足なく届けるには、運送会社さんの協力が欠かせませんが、ドライバーは常に人手不足。
付き合いを広げて他の運送会社さんを紹介してもらうなど、運送会社さんとのつながりを大切にしています。

2.梱包

働き手のひみつ

最も人手が必要となる梱包業務では、繁忙期になると、毎日40人以上のスタッフで作業にあたります。
1日に約2,000箱の梱包を行います。

梱包作業の様子の画像

梱包作業の様子

集計表をもとに、1回の出荷に必要な教科書を在庫から取り出します。
個別の伝票をもとに、必要な部数を梱包していきます。

梱包する部数を確認する様子の画像

伝票と照らし合わせながら教科書の部数を確かめる

これだけの物量を扱うためには、派遣社員の方たちの協力が欠かせません。
初めて派遣社員として働く方にも仕事への理解を深めていただくため、作業説明に入る前に、必ず教科書の大切さを共有しています。「今扱っている教科書は、新学期から、児童・生徒たちが学校教育で使うものなので、大切に扱ってください。」と。
また、業務上の不安をなくし、ミスを未然に防ぐために、頻繁に声をかけるようにしています。またここで働きたいと思ってもらえるように、丁寧な指導を心掛けています。
実際、長く続けてくださる派遣社員さんがたくさんいます。

段ボール箱のひみつ

梱包用の段ボール箱は、光村図書専用のものを使用しています。

光村図書専用の段ボール箱の画像

光村図書専用の段ボール箱

 

教科書を守るために、できるだけ硬い段ボール箱を発注して使っています。
学校に届くまでに複数の場所を経由するので箱はどんどん傷んでいきますが、ハードな道程にも耐えられるような段ボール箱です。その分コストはかかりますが、無事に、確実に届けるために万全を期しています。

梱包のひみつ

国内の子どもたちだけでなく、海外の日本人学校に通う子どもたちも教科書を必要としています。アジアからアフリカまで、222の地域に届けるために、約23万冊、段ボール箱の数にして約4,800箱分の教科書を梱包しています。
不足があったとき、すぐに対応することが難しいので、海外に発送する教科書は、特に丁寧にすべてを検査し、より厳重に梱包を行います。


通常、箱に隙間が空いたときは緩衝材として紙を詰めますが、海外に送る箱は、そもそも隙間ができないように、段ボールに手作業で切込みを入れて折り込み、高さをぴったりにしています。

梱包された箱の積み方にも工夫があります。
積み上げた箱の山を崩れにくくするためには、通常、箱の向きを変えながら積んでいきます。ですが教科書の場合は、種類や冊数によって箱の高さが違ってくるため、同じ面に揃えて箱を積んでいきます。これを棒積みといいます。箱の間に紙を挟む「合い紙」をすることで、荷崩れを防いでいます。

棒積みと合い紙の画像

棒積みされた箱と合い紙

3.出荷

梱包された箱は、配達先ごとにまとめられ、フォークリフトでまとめて運べるように、木製のパレットの上に積み上げ、崩れないようにラップで養生して保管します。毎日夕方に出荷作業を行います。

 

出荷を待つ箱たちの画像

梱包を完了し、出荷を待つ箱たち

梱包作業後の在庫の数が合っているかの残数確認を細かに行い、ミスが発生していないかをチェックします。

パレットのひみつ

パレットも、教科書専用のものを使用しています。天面の板に厚みをもたせることでゆがみをなくし、教科書が傷まないようにしています。
教科書を届けた後、各地で不要となったパレットは、積極的に回収し、再利用しています。丈夫なので、大事に扱えば何年も使うことができます。

回収されるパレットの画像

取引先から回収されるパレット

頼んだものが期日どおりに届くというのは、当たり前のことではなく、多くの人の協力があってのことです。
教発では、配達前に、教科書を取り次ぐ書店さんの都合を確認するために、100件以上の書店に電話連絡をしています。書店の方がその対応を喜んでくれたり、配送担当者を気遣う声をかけてもらえたりすると、嬉しいなと思います。
また、実際に配送を担当しているトラックのドライバーから、今日の配送が終了したという連絡が来ると、ほっとします。
出荷後も、多くの人の手を経て、教科書は全国各地の学校に届けられています。

送り手からのメッセージ

私たちの会社の基本理念は「子どもたち・社員・家族の幸せ」「安全」「品質」の三つで、「品質」は完全供給を意味しています。
きれいに作られた教科書に傷や不良を出さず、1冊たりとも間違えずに子どもたちに送り届けることが、私たちの役割。
常に、安全に、正確に届けることを最優先に考えながら、学校教育のインフラの一部を担っているという気持ちで、日々仕事にあたっています。

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