教科書づくりの現場から
2026年4月16日 更新
1冊の教科書の向こうには、たくさんのつくり手たちの仕事や思いが存在します。教科書ができあがり、届けられるまでの現場を取材しました。
4月になると、いつも当たり前に手元に届く教科書。
第1回 第2回 第3回 第4回 では、教科書が完成するまでのさまざまな工夫をご紹介してきました。
次は、子どもたちに傷や不良のない教科書を送り届けるための最終検査です。
小・中学校の教科書の検査や配送を担ってくださっている、教発株式会社の検本室を訪れて、そのひみつを教えてもらいました。
教えてくださった方

杉山 玲司 さん
教発株式会社 業務管理課
教科書供給業務に従事して20年。好きな給食のメニューはソフト麺。息子が中学校で過ごす最後の1年間、PTA会長を務めたのはかけがえのない経験。以後地域の活動に積極的に参加し、子どもたちを見守っている。
検査のひみつ
教科書は、ここにたどり着くまでの間に、印刷所と製本所で、機械と人の目による入念な検査を経ています。しかし、まれにそれらの目をくぐり抜けているものがあります。検本室は、子どもたちにきれいな教科書を送り届けるための最後の砦。発送する前の最終検査として、人の目による検本と強度検査を行っています。

検本室の様子
検本作業のひみつ
検査員による検本作業では、全体の5~10%の教科書を検査します。ページ数や製本の種類によりますが、1日あたり約5千~1万冊の教科書を、1冊ずつチェックしていきます。

傷や汚れなど、すべての教科書に共通のチェックポイントが10項目。
製本の種類によって留意すべき項目が5つ。特に気を付けるべき重大事項が4つある。
現在、1日に4名が作業にあたっています。検査で不良を見逃さないためには、経験の蓄積が非常に重要です。今は全員ベテランですが、習熟するまでの間は「検査作業スキル表」を使って、月に一度、検査の理解度を確認し、スキル向上に努めました。今では私には見えないような小さな傷も見逃しません。
チームワークも非常に大切な仕事です。不良が出たときには、他にも同じ不良のある教科書が混ざっている可能性も高くなるので、発見した不良の情報を毎日共有し、より精度の高い検査ができるように、日々心掛けています。

検本作業の様子。
ページをめくりやすいよう、指先部分を切り落とした手袋を用意して作業にあたる。
不良が見つかると、その箇所と種類、パレット番号を短冊に書き込んで教科書に挟みます。物流の現場において教科書は、一定のまとまりごとに運搬しやすいよう、木製の平らなパレットに載せて管理を行っています。どのパレットのどの位置の教科書から不良が出たかを記録しておくことで、工程を遡って原因を究明することができます。
不良の原因はさまざまで、輸送中やパレットに積む過程で発生した角折れなどもありますが、同じ種類の不良がいくつか見つかったときは、製本所や印刷所とも協力して原因を調べ、同じ不良が発生している範囲を特定し、チェックを行います。

表1(表紙)に傷のあった事例。
「21-5」という数字は、この教科書が、パレット番号21番の5段目の位置にあったことを示す。
教科ごとにさらに細かく検査基準が定められています。例えば、国語の教科書に乱丁がないことを確かめるためのチェックポイントを表にまとめています。
また、製本の仕様は年々複雑になり高度化しているので、その分、注意すべきポイントも増えていきます。教科別ですと、例えば生活や英語にはブックインブックやカードが付いているので、検査するときには、取れてしまわないように気をつける必要があります。

令和6年度版小学校国語3年生下巻のチェックポイントをまとめた表。
2行目に、折の境にあたるページが示されている。
この箇所を確かめれば、全てのページが揃っていることを確認できる。
強度検査のひみつ
検査機に教科書をセットしてページを引っ張り、強度に問題がないか確認します。
「第4回 教科書の製本のひみつ」でもご紹介した通り、既に製本所でも同じ検査をしていますが、念には念を入れて、検本室では違う箇所を引っ張ってチェックを行います。
検本室のみなさんより
実際に現場で検本作業に当たられている方々に、やりがいや、仕事に取り組む際の思いを聞きました。
小学生の孫がいるので、子どもたちのもとに不良のある本が届いて、悲しい気持ちにさせたくないという気持ちでやらせてもらっています。
何事もなく、きれいな教科書を送り出せると達成感を感じます。
4月に小学校に入学する孫が、光村の教科書を使う予定です。子どもたちに喜んで使ってもらいたいという思いで日々検品させていただいています。
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