みつむら web magazine

多様性と言葉 さまざまなルーツ⑥――事例3 社会福祉法人さぽうと21 目黒教室(東京都品川区)

教育情報誌「とことば」

2026年4月22日 更新

教室の中と外の世界をつなぐ今日的なテーマを「言葉」を切り口に追いかける教育情報誌「とことば」。
言葉のもつさまざまな側面を切り取りながら、子どもたちに言葉のもつ可能性や豊かな世界に出会わせる方法を考えていきましょう。

私たちの社会では、母語や文化が異なる多様なルーツをもつ人々がともに暮らしています。母語や文化が異なれば、同じ言葉から受け取るイメージや発想が違うこともあるものです。
では、日本語を母語としない子どもたちは、異なる言語文化の中でどのように言葉と向き合い、成長しているのでしょうか。そして、学校や周りの大人にはどのような支援ができるのでしょうか。
三つのエッセイを入り口に、学校や支援団体などへの取材を通して考えます。

学校でも家でもない、三つ目の居場所

長年にわたり、難民などの外国出身者の自立支援を行ってきた「さぽうと21」。支援事業の一環として行われている学習支援の取り組みは、子どもたち一人一人の夢を実現する手助けにもなっています。

雑然とした場所で生まれるコミュニケーション

毎週土曜日に開かれる学習支援室は、2時間ずつの入れ替え制。一度に10人ほどの子どもたちが集まる。1対1の個人指導が基本だ。理科、算数、英語などの宿題に取り組む子。作文の内容を考える子。わからない言葉を教えてもらいながら、好きな本を読む子。ここでは教科にこだわらず、やりたいことを自由に学べる。「きちんとした場所よりも、雑然とした場所でありたい。かしこまりすぎないほうが、自由なコミュニケーションが生まれやすいんです」(チーフコーディネーター・矢崎理恵さん)。

支援室に通い始めて半年ほどになる、小学校5年生の二人に話を聞いた。二人とも両親がミャンマー出身で、生まれは日本だという。「イベントで手縫いのトートバッグを作ったのが楽しかった」と、ここでの感想を話してくれた。支援室では、ワークショップやイベントを開催することも多い。ぶどうを食べ比べて感想を共有したり、川柳を作ってその句に込めた思いを作文にするなど、言葉で表現する機会を豊富に設けている。「言葉の力があると、自分の考えを説明できるようになる。自分の考えを言葉にすると、他の人の考えも知りたくなって、意味のある言語生活が生まれます」と矢崎さん。生活と結び付いた体験を言葉にしたり、思ったことを言葉にする機会を大切にしている。

話したいと思える相手がいること

学習支援室は、孤独に陥りがちな外国の子どもたちにとって、貴重な交流の場にもなっている。話を聞かせてくれたミャンマールーツの二人もここで知り合い、友達になった。矢崎さんは、気を楽にしていられる場所を提供したいと願う。「学校で話し相手がいなかったり、家族が共働きで夜一人になってしまったり、居場所のない子も多いんです。この場所の存在意義は、言葉を学ぶことを超えて、学校でも家でもない三つ目の居場所であることです」。家庭では共有しにくい学校の悩みも、ボランティアにはわかってもらえる。「話したいと思う相手がいることは、日本語学習に大きく影響すると思います。些細なことでも、すごい、がんばってるね、と褒めてくれる、よかったね、と話を聞いてくれる人。認められると、その状態を保ちたい、そうあり続けたいと思える。それが、がんばりたいという気持ちにつながります」。

言葉の力を育むだけでなく、生活や心に寄り添い、一人一人の夢ややりたいことを実現する手助けをする。外国ルーツの子どもたちを長年にわたって支援してきたさぽうと21の取り組みには、子どもたちと向き合ううえで知っておきたい、大切な視点が詰まっていた。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集