みつむら web magazine

多様性と言葉 さまざまなルーツ⑤――事例2 日本語初期指導教室カラフル(愛知県西尾市)

教育情報誌「とことば」

2026年4月22日 更新

教室の中と外の世界をつなぐ今日的なテーマを「言葉」を切り口に追いかける教育情報誌「とことば」。
言葉のもつさまざまな側面を切り取りながら、子どもたちに言葉のもつ可能性や豊かな世界に出会わせる方法を考えていきましょう。

私たちの社会では、母語や文化が異なる多様なルーツをもつ人々がともに暮らしています。母語や文化が異なれば、同じ言葉から受け取るイメージや発想が違うこともあるものです。
では、日本語を母語としない子どもたちは、異なる言語文化の中でどのように言葉と向き合い、成長しているのでしょうか。そして、学校や周りの大人にはどのような支援ができるのでしょうか。
三つのエッセイを入り口に、学校や支援団体などへの取材を通して考えます。

「一人じゃないよ」――子どもを孤立させない支援

愛知県西尾市で推進されている多文化共生のまちづくり。市が設置した「日本語初期指導教室カラフル」は、来日したばかりの子どもたちを受け止める場として大きな役割を果たしています。

自分らしさを出せる場所に

カラフルは、海外から編入してきた小・中学生を対象に、約3か月にわたって、日本の学校生活に必要な基本的生活習慣や日本語指導、教科学習の導入などを行うプレクラスで、市内の二つの小学校に設置されている。週5日のうち4日はカラフルで学び、1日は在籍校へ登校する。在籍校で安心して過ごせるように橋渡しをするのがカラフルの役目だ。登校したら上履きに履き替える、ロッカーにかばんを入れる、チャイムが鳴ったら教室に戻る、持ち物に記名する―こうした習慣一つ一つが、来日間もない子にとっては初めての体験となる。

そんな中、カラフルが最初に大切にするのは、「ここでは、まず自分を出していい」という居場所づくだ。室長の菊池寛子(きくちひろこ)先生は保護者と丁寧に面談し、子どもの育ちの経緯や得意なことを聞き出す。楽器が好き、計算が得意など、「その子らしさ」を在籍校にも積極的に伝えることで、周囲の理解を促し、子どもが自信をもって学校生活を送れるようにしたいと菊池先生は話す。

母語による支援で孤立を防ぐ

日本語がほとんどわからない子の孤立を防ぐために、母語での支援も充実させている。2009年の開設当初(※)、日本語教育を支援する専任スタッフは1名だったが、15年を経て20名に増え、現在は、ポルトガル語、ベトナム語、フィリピノ語、スペイン語、インドネシア語、中国語、英語の7言語に対応している。支援員は、カラフルでの指導に加え、市内の学校を巡回して子どもたちの様子を見守り、学習支援なども行っている。支援員の中にはカラフル修了生もおり、子どもの気持ちに寄り添うきめ細かな支援は何より心強い。

  • 2009年から2019年までは、「早期適応教室」という名称で運営。

積極的な情報発信

カラフルではSNSを積極的に活用し、子どもたちの学習の様子をショート動画などで発信している。ふだんからSNSで情報収集をする保護者が多く、子どもたちの日々の様子を伝える手段として有効だという。また、これから来日するかもしれない海外の子どもたちや、来日したばかりの子どもたちに向けて、カラフルの活動を知ってもらうねらいもある。菊池先生は「もし全国のどこかの教室で、ぽつんとしている子がいたら、カラフルのSNSを見せてあげてほしい。一人じゃないことを伝えたい」と語る。

カラフルの15年間の取り組みは、あらかじめマニュアル化されていたものではなく、目の前の子ども一人一人を見ながら考え出してきたものだ。「孤立する子どもをつくらない」「誰もが自分らしく過ごせるように」といった思いが、その背景にある。多様なルーツをもつ子どもたちが増える中、カラフルのこれからの歩みにますます注目したい。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集