書写の基礎講座
2015年1月30日 更新
小学校書写の目標、望ましい学習のあり方、心がけたいポイントなど、指導に関する基礎的な知識や考え方について、わかりやすく解説します。
基本点画の書き方
小学校で学習する文字の書体は楷書です。なぜ、楷書が用いられるのでしょうか。漢字の書体には篆書(てんしょ)・隷書(れいしょ)・草書・行書・楷書があり、最後に楷書が完成しました。今から1300年あまり前のことです。
その当時は、すでに篆書・隷書はすたれ、草書・行書・楷書が日常的に混用されていました。その中で、楷書はしだいに公的な書体としての地位を獲得していったのです。それはなぜかというと、線を連続したり省略したりして流動的字形で書かれる草書・行書に対して、楷書は線の一つ一つが独立しているのでわかりやすく、さらに字形が構築性に富んでいることから読みやすいといった特長を備えていたからだと思われます。また、印刷術が発達する途上で発明された活字も楷書をもとにデザインされました。それ以後、書き文字としての新しい書体は生まれることなく今日に至っています。
このように、楷書は書き文字や印刷文字の書体として最も多く使用されていることから、漢字の標準として示される書体になったのです。文字習得期にあたる小学校で学習する漢字が楷書である理由がここにあります。なお、平仮名は草書から生まれた日本独自の文字ですから、本来の筆使いや形は草書に近いのですが、楷書の漢字に調和させるために、あえて楷書の筆使いに近づけた楷書的平仮名(楷書に調和する平仮名)を学習します。
楷書で書かれる文字の線は一つ一つ分離されて書かれます。この構成要素を「点画」といいます。点画にはさまざまな書き方や形がありますが、大きく分けて8種類あり、名称が付けられています。
では、ここで問題です。
【問題】
次の「記念」に示された(1)~(8)の点画の名称は?
【解答】
(1)点 | (2)横画 | (3)縦画 | (4)曲がり |
(5)折れ | (6)左払い | (7)右払い | (8)そり |
この8種類が漢字を構成する最も基本となる点画で「基本点画」といいます。この中で特に、(4)曲がり、(5)折れ、(8)そりの名称が理解されていないようです。「曲がり」は、方向を変える部分を止めないでカーブして書く画、「折れ」は、方向を変える部分で一度止めて書く画です。そして「そり」は、大きな円の一部を書く画です。
書写の学習では、課題文字を書く前に「点画の名称を唱える」「使用されている点画を抽出して書く」などの習慣をつけると点画に対する意識が向上するでしょう。また、筆使いが未熟で半紙にうまく書けなくても、点画に関しての知識は得られる場合もありますから、この点も評価の対象にしたいものです。さらに、新出漢字などの指導においても、書写の授業で使用する基本点画の名称を用いて指導することが書写の日常化に役立つでしょう。基本点画の書き方は、まさに文字の命なのです。