書写の基礎講座
2015年1月30日 更新
小学校書写の目標、望ましい学習のあり方、心がけたいポイントなど、指導に関する基礎的な知識や考え方について、わかりやすく解説します。
鉛筆の持ち方
「鉛筆の持ち方(執筆法)」は、書写の学習の中で最も基礎となる内容です。先生方も繰り返し指導されていることと想像しますが、先生方と児童の努力のわりには、思うような成果が上がっていないのが実情ではないでしょうか。その根本的な原因は、鉛筆の持ち方における指の使い方の原理が十分把握されていないことにあり、それが学習指導を困難にしていると考えられます。
では、具体的にはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、線の方向によってそれぞれの指がどのような働きをするのかを原理的に考えてみたいと思います。鉛筆を持つ親指、人さし指、中指には、単に鉛筆を支える働きだけではなく、次に示すように、書かれる線の方向によってそれぞれが分離して異なる働きがあると考えることができます。
- 線の方向に押す(推進力)
→自動車の「アクセル」に相当する働き - 線の方向をコントロールする(方向制御)
→自動車の「ハンドル」に相当する働き - 推進力を抑える(推進力制御)
→自動車の「ブレーキ」に相当する働き
具体的な画の方向による指の働きを図に示すと下図のようになります。
上の関係図をアクセル、ハンドル、ブレーキの働きに置き換えて表にしてみましょう。
線の方向 | 親指 | 人さし指 | 中指 |
---|---|---|---|
横 | アクセル | ハンドル | ブレーキ |
縦 | ハンドル | アクセル | ブレーキ |
左上 | ブレーキ | ハンドル | アクセル |
これを活用して、
「親指の先のやわらかい部分を鉛筆に当てて押してみよう。線はどっちに引けるかな?」
「人さし指を押して縦画を書いてみよう。中指はブレーキだよ」
「縦画のはねは、どの指で押すのかな?」
などと声かけをしてみてください。三本の指が自然に適切な位置に置かれ始めるはずです。そして、指が適切な位置に置かれることで、鉛筆全体をしっかり支えながら、先端をあらゆる方向に自由に動かすことができ、長時間書いていても指や手首に負担がかかりにくい持ち方となるでしょう。
鉛筆の持ち方は、そのフォームだけを指導するのではなく、指の機能と線や点画の方向との関係を原理として理解させることが早道のような気がします。鉛筆の持ち方が固定されていない低学年では特に効果的だと思われます。