みんなで考える「やさしい日本語」
2026年6月9日 更新
岩田一成・李暁燕
日本語教育を専門とされる岩田一成先生が聞き手となり、外国人保護者と「学校プリント」について研究される、李暁燕先生にお話をうかがいました。
AIを活用した保護者支援
岩田:
李先生は現在、AIを使った外国人保護者支援システムの開発に携わっていらっしゃるそうですね。アプリの試作版(※)では、チャットボットに「入学式の持ち物は?」と尋ねると、「上履き」や「筆記用具」などの持ち物のあとに、なぜそれが必要かについて説明が出てきます。学校のお知らせに書いていないようなことまで言語化してくれるんですね。

李:
学校プリントから情報を抽出した上で、書かれていない情報を人間が補足してデータベースを作り、AIに学習させました。入学式に上履きが必要というだけではなくて、どうして必要なのか。外国人保護者にはその説明が必要だと、私自身が感じていましたから。
岩田:
その辺りの配慮がいいですよね。
李:
私自身、子どもの卒業式や入学式のとき、保護者の服装がわからなくて困ったことがあって。ネットで調べても自信がもてなくて、誰かに確かめたかったんですが、親しいママ友がいませんでした。そういう不安な気持ちを今も覚えているので、何でも気軽に質問できるようにしたかったんです。
岩田:
試作版では、日本語のあとに英訳が出てきます。ほかの言語にも対応できますか。
李:
チャットに「中国語で教えて」のように書き込むと、中国語で回答が得られます。ほかに、韓国語やベトナム語などにも対応しています。検証実験を通じてユーザーの反応を見ながら、より使いやすくなるよう改善していく予定です。
誰にとってもわかりやすく
李:
学校プリントは、明確に書いていないことがある一方で、細かい情報が大量に書いてあることもありますよね。日本語ができる外国人でも、日本の学校文化や前提知識を知らなければ、すべてが未知の情報なので、読むのは大変です。
岩田:
文章を整理して、必要な情報にしぼったものを「プレイン・ランゲージ(plain language)」と呼ぶんですけど、これは外国人だけでなく、日本人にとってもわかりやすいんです。日本の学校プリントや自治体のお知らせも、プレイン・ランゲージを使ってすっきりしていけるといいですよね。
李:
文章の要約ならAIを使うこともできると思いますが、課題などはありますか。
岩田:
たくさんの情報の中から必要なものを抜き出すことは、もうAIでできますよね。ただ、噓が混じることもありますし、現時点では、自治体や学校のお知らせは、最終的に人間が確認しないといけないと思っています。
李:
その通りですね。やっぱり人間のチェックは大事ですよね。
岩田:
人間がチェックできるんだったら、最初から人間がわかりやすく書けばいい、という話に戻ってしまうんですが(笑)。日本人だって細かい大量の情報を読むのは大変ですから。
李:
日本人と外国人に分けて考えるのではなくて、誰にとっても理解しやすい文章になるといいですよね。
※学校文化なんでも相談チャットボット「PAPAMAMA-TOMO」。保護者向けAIチャットボットの試作版を配布中(https://www.papamama-tomo.com/)。
(2026年4月9日 オンラインにて)
岩田一成(いわた・かずなり)
聖心女子大学教授、博士(言語文化学)。元青年海外協力隊隊員(中国派遣日本語教師)。大阪大学大学院言語文化研究科修了。専門は日本語教育、日本語文法。国・自治体の職員や教職員に向けた研修アドバイザーを務めるなど、いろいろな組織の文章改革に伴走している。モットーは「風通しの良い社会は、すっきりした文章から!」。
著書:『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『読み手に伝わる公用文』(大修館書店)、『新しい公用文作成ガイドブック』(日本加除出版)ほか
李暁燕(り・ぎょうえん)
九州大学准教授、博士(知識科学)。専門は異文化理解、多文化社会における知識共創。外国人保護者のための学校プリント研究のほか、AIを活用した外国人保護者支援システムの構築などに取り組んでいる。
著書:『学校プリントから考える 外国人保護者とのコミュニケーション』(編著、くろしお出版)、『「多文化グループワーク」による言語と文化の創造学習――知識科学の視点から見るアクティブ・ラーニング』(ココ出版)
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