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学校で「やさしい日本語」ができること(3)

みんなで考える「やさしい日本語」

2026年5月22日 更新

岩田一成・島野聡子

日本語教育を専門とされる岩田一成先生が聞き手となり、熱海市立桃山小学校の島野聡子校長先生に、「やさしい日本語」の取り組みについてうかがいました。第3回では、取り組みを広めていこうという、お二人の想いが語られています。

伝わらないと困るのは先生たち

岩田:

桃山小では研修のあと、すぐに「やさしい日本語」を実践してくださっていますよね。学校の先生たちは、そういう動きが早いように思います。

島野:

学校の場合は、許可を取らなければいけない相手が少ないからでしょうか。担任の上がすぐ教頭、校長ですから。校内の文書改善については、管理職が前を向いていれば、すぐに進むかなと思います。私たち管理職も、現場の先生方がやったことを見届けることができるので、ああ、動いているんだなっていうのがわかります。

岩田:

やっぱり組織のサイズがコンパクトだからですね。

島野:

熱海の小中学校は、理解のある管理職も増えてきていますが、だからと言って、管理職次第だというところで終わってしまうと、どうにもならないですよね。

岩田:

そうなんですよ。教育委員会次第だという話でもないですし。

岩田先生 画像

島野:

でも、外国ルーツの子が増えているという事実は間違いなくありますから。学校としては、子どもよりも、保護者に伝えたいっていうニーズが大きいと思うんです。たとえば、これを何日までに準備してっていうのは、伝わらないと先生が困るので。

岩田:

先生ご自身が困りますよって言うと、先生たちも動きやすいかもしれない。ただ、たとえば研修を企画して動くっていうと、やっぱり校長先生や教育委員会の理解が必要かなという気がします。校長先生であれば、ご自身の判断でできますか。

島野:

学校として必要だと思えば、校長は動けると思います。

すべての子どものために

島野:

「やさしい日本語」の取り組みは、当該の児童や家庭のためだけではなく、ユニバーサルデザインとして、誰もがわかるものを目指すといいと思うんです。将来的には、式典のお知らせは直せないとか、そういう先入観がなくなればいいなって。

岩田:

そうですね。教科書が読めない子どもが増えている、という話がありますが、もう今そういう状況ですから。お知らせを「やさしい日本語」にすることで、外国ルーツの子でなくても、救われる子がいるんじゃないかなと思います。

岩田先生と島野先生 画像

島野:

今までのお知らせから大きく変えるのは、相当勇気がいるんですよ。それが本当に読み手のためだと、心から理解すればできるはずなんですけど、「えっ」って言われたときに、それを跳ねのけられるだけの勇気と覚悟が必要です。

岩田:

「えっ」て言われたときに押し切れるかどうか。そこが難しいですよね。

島野:

その子とその保護者のためと思っていたのが、クラス全体のためにもなるし、全家庭のためにもなる。すべての子ども、すべての家庭に広げて考えるのが、次の一歩かなと思いました。市内全体がそういう気持ちでやっていったら、熱海の小学校はみんな「やさしい日本語」を使うようになる。その子どもたちが中学に上がったら、中学校にもそれが広がっていくといいなと。

岩田:

いいですね。理想的です。

島野:

がんばってみたいと思います。

(2026年3月23日 光村図書にて)

岩田一成(いわた・かずなり)

聖心女子大学教授、博士(言語文化学)。元青年海外協力隊隊員(中国派遣日本語教師)。大阪大学大学院言語文化研究科修了。専門は日本語教育、日本語文法。国・自治体の職員や教職員に向けた研修アドバイザーを務めるなど、いろいろな組織の文章改革に伴走している。モットーは「風通しの良い社会は、すっきりした文章から!」。
著書:『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『読み手に伝わる公用文』(大修館書店)、『新しい公用文作成ガイドブック』(日本加除出版)ほか

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