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山崎先生の授業アイデア 第6回

山崎先生の授業アイデア

2016年9月14日 更新

山崎 正明 北翔大学教授

日々の美術の授業に役立つ、さまざまなアイデアをご紹介します。

第6回 作品展示のポイント

前回(第5回)に引き続き、生徒作品の展示についてご紹介します。

第5回 「作品展示で大事にしたいこと」はこちらから。

1. 展示のしかた

絵画の場合、本当は額縁に入れて展示したいところですが、予算の面で難しいことも多いので、私は台紙に貼って掲示するようにしています。立体作品の場合は、必ず台を用意します。それによって、作品の見え方が大きく変わるので、大切なポイントだと考えています。

画像、作品展示の様子
ただ作品を並べるのではなく、台紙に貼るなどのひと手間を加えたい。

展示スペースが不足する場合は、期間を区切って展示の入れ替えをします。また、作品の内容に応じて展示場所も考えるとよいでしょう。その学年だけが鑑賞できるのか、全学年が鑑賞できるのか、生徒の立場に立つとその違いは大きいと思います。
また、かっちりとした展示だけではなく、ラフな展示も楽しみましょう。ピンナップボードのような感覚で、生徒が気軽に描いた作品を掲示するのもよいと思います。

画像、作品展示の様子
生徒が描いたちょっとした作品をラフに展示するのも楽しい。

2. 校外での展示

校内だけではなく、校外で作品を展示することはたいへん意義のあることです。校外展示のよさは、作品を通して中学生のすばらしさを、外部の方に知ってもらえることです。

前任校で「街かど美術館」と名付けて、コミュニティセンター等で、生徒作品の展覧会を開催したことがあります。前回ご紹介したように、作品には、自分の思いを書いたカードを添えます。普段、生徒たちを知らない外部の方にこそ、カードの言葉を手がかりに鑑賞をしてほしいと考えるからです。そういう意味で、カードは校内展示のときよりも、さらに重要な役割を果たすと思います。

画像、作品展示の様子
「街かど美術館」の展示の様子。

作品を観た人は、生徒たちが作品に込めた思い、中学生の価値観など、さまざまなことを感じ取ることでしょう。賞のある作品展などで見られる反応、「うまいね」「どうして、この絵が賞にはいっているの?」というような、作品を技術的な上手・下手で見るのとは明らかに異なる視点で、生徒作品を鑑賞することができると思います。

また、市民や保護者とともにギャラリートークを行うのもよいでしょう。こうして中学生の作品を通して地域の人と教師や生徒とのコミュニケーションが生まれます。

3. 作品展示がもたらすもの

校外での展示は、地域と学校をつなげるきっかけになります。「街かど美術館」を開催した後、町内会の方に「町内会館に生徒さんの作品を展示したいので、作品を借りることはできますか」と言われることもありました。
いっぽう、校内での展示では、同僚から「展示された作品から、生徒をより知ることができた」「作品展示は、生徒どうしのコミュニケーションの助けになっている」など、好意的な反応が多く得られました。

生徒作品の展示を通して、「美術科」が学校経営に目に見える形で貢献できるのだと実感できました。作品展示は、工夫次第で大きな力をもつと、私は思います。

次回は、自画像制作についてご紹介します。

山崎正明(やまざき・まさあき)

1957年北海道生まれ。北翔大学教授、元千歳市立北斗中学校教諭。北海道教育大学札幌校卒業。埼玉県で講師を務めた後、北海道の公立中学校教諭に。自身のブログ「美術と自然と教育と」で、授業実践や生徒作品などを紹介している。光村図書中学校『美術』教科書の編集委員でもある。

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