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第20回 古典を楽しむ(2)――「Contemporary Remix 和歌」

そがべ先生の国語教室

2017年1月20日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第20回 古典を楽しむ(2)
――「Contemporary Remix 和歌」

前回に続いて、和歌を現代詩化して写真作品と組み合わせ楽しむという学習をご紹介します。

第19回 古典を楽しむ(1)――「Contemporary Remix 和歌」

生徒の作品例をもう一つ見ていただきましょう。

画像、生徒作品
作品例2 「見ずもあらず……」(1枚目)
画像、生徒作品
作品例2 「見ずもあらず……」(2枚目)

恋は中学生の一大関心事。「百人一首にも恋歌がたくさんあるけれど、作者の心情が語られている分、現代詩に書き換えやすいかもしれませんね」と話したので、恋歌を取り上げた生徒も少なくありません。

「ながめる」というのは、古典和歌の中では「遠くを見る」という現代語の意味よりは「物思いにふける」という意味で用いられることの多い語です。ですから「今日は見るだけで」という現代詩化では、そのことがわかっているのかどうかわかりかねます。そこで解説の下書きを見てみると、

「見なかったとも言えず、見たとも言えなかった人が恋しくて、今日はただ、訳も分からないまま思いを過ごそうと思います。」

と、しっかり歌意を調べられています。そこで、コンピュータ室で制作している途中で、「『ながめ』は古典では『物思いにふける』という意味なのをちゃんと調べてありますね。現代詩の『今日は見るだけ』だと『物思い』という意味は伝わりにくいけど、この写真がいいですね。夜になって窓の外を眺めながらあの人のことを思っているだろうってすぐに伝わりますね。これは自撮り?」と聞くと、嬉しそうに「家の人に撮ってもらいました」と答えました。


二つの作品例を見ていただき、途中の指導の様子をご紹介しました。いかがですか? 和歌の現代詩化。
「書き換え」という言語活動を通して作品を読み味わっていくときには、こんなふうな声かけのしかたが、鑑賞の質も作品の完成度も高めていくのではないかと考えています。

次回は「奥の細道」を取り上げます。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

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