みんなが楽しむ生活科
2019年6月12日 更新
田中 千草 元 京都市立桂徳小学校校長
毎日楽しく、魅力ある学校の中心になるような生活科実践のヒントをお届けします。
第1回 みんなが楽しむ生活科
毎日が楽しくなる、早く行きたくなる。そんな魅力ある学校の中心の教科が生活科であってほしいという願いを込めて、「みんなが楽しむ生活科」のコーナーをお届けします。
子どもが楽しむ生活科
子どもA 「先生、○○ちゃんが転んで血が出たの。そうしたら、6年生のお姉さんが、病院に連れて行ってくれたよ。先生に消毒してもらったよ」
子どもB 「病院? 学校の病院はどこにあるの?」
子どもC 「病院じゃないよ。保健室っていうんだ。」
先生 「それなら、みんなで保健室がどこにあるか、どんな先生がいらっしゃるのか、探検に行きましょう。」
けがをした子どもの痛みはどこへやら。先頭を切って道案内をしてくれます。先生が先頭に立って学校の中を探検することより、子どもたちは、キラキラした目できょろきょろしながら目に映るものを興味をもって目に焼き付けて探検することでしょう。
先生が楽しむ生活科
新一年生の子どもたちは、幼稚園や保育所など、いくつもの就学前施設から入学してきます。同じ地域にあっても、環境はさまざまです。子ども一人一人がそこでどんな人間関係をつくって入学してきたのかを知ることが、生活科を楽しむ第一歩です。
第一歩を踏み出したら、子どもたちと一緒に空を見上げてみましょう。道端に生えている草花に目を向けてみましょう。朝なのに月が見えたり、アスファルトの割れ目からイヌノフグリの花が顔を出したりしています。校庭の片隅にも不思議なもの美しいものがたくさんあります。子どもたち一人一人の反応の違いを不安がる必要はありません。それこそが、先生にとっての大きな喜びではないでしょうか。先生が楽しむことで生活科が輝きます。
保護者が楽しむ生活科
新学期は保護者の方たちも不安でいっぱいのはずです。特に、はじめての子どもが入学したときはなおさらです。
保護者が不安を抱えていると、その不安は子どもにも伝わります。しかし子どもが学校であったことを楽しそうに話すと、保護者は安心します。
こんなことを言ってくれる保護者もいました。
「先生、先日家族で実家の田植えに行ってきました。
ザリガニをとってきたので、学校に持っていってもいいでしょうか。」
子どもたちが生活科を楽しんでいることで保護者をも巻き込み、ザリガニが教室の仲間になりました。しばらくしてザリガニのおなかに卵がいっぱい。赤ちゃん誕生を待ちわびて、みんなが楽しむ生活科になりました。
次回は、「まちを楽しむ」です。
Illustration: フジイイクコ
田中千草(たなか・ちぐさ)
横浜市生まれ。京都市内の公立小学校に勤務し、平成4年に生活科が教科化されて以来、積極的に実践・研究を重ねる。近畿地区小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会会長などを歴任。令和2年度版光村図書「せいかつ」教科書編集委員。
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