書写の用具研究
2017年10月2日 更新
編集部 光村図書出版
書写の用具を一つ取り上げ、書写用具店の方にお話を伺うコーナーです。
第6回 硯ができるまで
昭和13年の創業以来、宝研堂の硯は、書家の先生など多くの人々に愛されています。2階にある工房では、硯の製作も行っています。その主な工程をご紹介します。
1. 石の形を整える
採石された硯材を、丸鋸(まるのこ)を使って使用するサイズに切り分ける。次に円盤という、大きな円型の機械を使い、大まかな形に整える。
2. 機械彫り
昔はすべて手彫りだったが、近年は墨堂の部分、墨池の一番深い部分などは機械を使って彫る。仕上げ彫りのときに時間がかからないよう、ていねいに彫る。
3. 仕上げ彫り
機械彫りした硯材を整えるようにして、手で彫っていく。長方硯の場合、硯の胸の部分が左右対称に彫れているかなど、細心の注意を払う。
4. 磨き
砥石や耐水ペーパーを使って、なめらかに研磨する。長方硯の場合、この磨きの工程がいちばん時間がかかり、また硯の出来を左右する。そして最後に泥砥石(どろといし)で目立てをする。
5. 仕上げ
磨き上った硯をよく乾かし、全体に薄墨を塗る。墨が完全に乾いたところで漆(うるし)を塗り、いったん乾燥させる。その後、墨堂の部分の漆を磨いて完成。
次回は、紙について取り上げます。