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第2回 力のつく国語のノートづくり

そがべ先生の国語教室

2015年5月11日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第2回 力のつく国語のノートづくり

国語に限らず、ノートって、とっても大切ですね。国語の学習に参加して、いろいろ考えたり話し合ったりしていく。そのこと自体が言葉の力を伸ばすわけですが、意識的にノートをつくっていくことには、少なくとも次の効用があると考えています。

国語の意識的なノートづくりの効用

1.自分の考え(意見や読み)を形あるものにする
・意見や考えをつくる助けになる
・それが積極的な学習参加につながる

2.学習の様子や過程を「記録」して保存する
・どんなやりとりがあったのか、どんなことを考えたのかが残せる

3.学習を広げる
・辞書を引いて書き加えたり、自分で調べたことを書き足したりして語彙や知識を増やせる

4.学習を振り返り、定着をはかる
・学んだことを整理し直したり、振り返って活用を図ったりできる

2や4の「記録」「振り返り」のためのノートというイメージはだれもが最初に思い浮かぶかもしれませんね。実は、1や3の意味も大きいのです。
私たちは、自分の意見を頭の中(脳の中)でつくり、それを話して伝えたり、書いて表したりします。あらかじめ頭の中でできあがった考えを話したり書いたりして外に出す(外言化する)という手順のように感じられます。でも、実は、「話してみること」「書いてみること」によって、「話したり書いたりしていくうちに」考えが生み出されたり、まとまってきたりすることも少なくないのです。
「書く」という作業を通して自分の考えを形あるものにしていく=これが手元のノートにどんどん書き込みをしていくことの、とっても大切な意義なのです。

ノート指導のポイント

そこで、私は次のようにノートのつくり方を指導します。

【1】縦書き専用ノートを使う
・横罫のノートでなく、縦罫のノートを使う
(私の学校では、縦書き用のノートを一括して購入して使わせています。)

【2】適当な位置(例 全体の下から1/3ほどの位置)に線を引いて、上下を分ける
(1)上段は「授業の記録」
 ・板書の内容
 ・友達や先生の発言を記録する 等
(2)下段は「メモスペース」
 ・自分の考えや思いついたことのメモ書き
 ・授業中に気付いたことや気になったことなどのメモ
 ・グループで話し合ったことや発表前のアイデアなどのメモ
 ・辞書を引いてみたメモ 等

【3】「今日の学習まとめ」をする
・新しく学んだ知識
・気付いた「○○の仕方のコツ」
 例) ……に注意して読むと深く読める。/意見を言うときは「結論・理由」の順が良い。 等

【4】単元が終わったら「学習のまとめ」をして提出する
(1)学習内容のまとめ
 ・どんなことについてどんな手順で学習したか
 ・学習用語の意味や使い方を自分の言葉で整理
(2)コツのまとめ
 ・学習を通して気付いた「話す・聴く・書く・読む」のコツを書き出す
 例)評論を読むときは……すると良いことがわかった。/ブックトークではまず……を話して、次に……を話すと聞きやすい。
 

画像、生徒のノート
生徒のノート。上段は「授業の記録」で、下段は「メモスペース」。

ノート点検・評価

こうして日々のノートに取り組ませ、定期的にノート点検・評価をします。ちょこちょこと集めては一言添えて返すというのを繰り返すのですが、「今日はノートの下段の使い方だけを見る」、「今日はこの課題についての書き込みだけを見る」というようにピンポイントで評価していくのが、短時間で回数をこなす上での秘訣です。

私は、最初のうちは一つの単元を終えたら、ノートを提出させて大点検・評価をします。最初の1~2回はちょっと大変ですが、生徒たちがノートづくりのコツを学んでくると、点検・評価も少しずつ楽になります。

大点検の結果は、評価のハンコ(私は野球部顧問なので、野球のイラストのハンコを使っています)と、評価を明記して返します。例えば、

  • 毎日のノートがきちんと書かれているか。
  • ワークシートがしっかり書き込まれていて、ノートに貼りつけられているか。
  • 学習のまとめがきちんと書かれているか。

などの評価の観点を設定して、観点ごとに、S(素晴らしい)、A(良い)、B(おおむね良し)、C(もう少しがんばれ)、の評価を付けます。

画像、生徒のノート
この生徒はきちんとノートづくりができていたので、観点ごとに、A(良い)、S(すばらしい)、S(すばらしい)の評価を付けた。

そして、他の人にも参考になるノートの取り方や「学習のまとめ」をしているノートをカラーコピーして、「今回のピカイチノート」として貼り出して参考にさせたりもしています。
実は、こうした評価の結果をもらった上で、「学習のまとめ」については、付け足ししたり修正したりして出し直せば、評価もアップしてあげます。学習のまとめのやり方をつかめば、より確かな定着を図れるからです。

「学習記録ノート」によるノート指導

ノート指導には、こうした個人のノートの指導だけでなく、「授業記録ノート」というのを活用しています。「授業記録ノート」は、当番の生徒(授業ごとに、番号順に回していきます)が、自分のノートの代わりにつくるノートです。いつも以上に丁寧に記録し、学習のまとめをするようにさせます。

当番のときは、自分のノートは書かず、「授業記録ノート」を自分のノート代わりに書いていきます。そして、学習まとめや感想なども書いた後、下校前に提出して帰ります。教師は次の時間までに、コメントをしてカラーコピーをとります(当番の生徒は、そのカラーコピーを自分のノートに貼ります)。
そして、次の時間の最初に、前の時間の当番が「前回の学習の振り返り」として、記録ノートを見ながらこんな学習をやったと簡潔に振り返り、まとめや感想、教師のコメントを発表します。

「授業記録ノート」はノート指導の日常化にも役に立ちます。教師は忙しいですから、全員のノートの取り方をそんなに頻繁に見てあげられないかもしれませんが、当番のたびに個別のノート指導をしてあげられますね。

次回は、話し合い指導についてご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

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