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第6回 話し合い指導(4)―考えを可視化する―

そがべ先生の国語教室

2015年9月1日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第6回 話し合い指導(4)―考えを可視化する―

考えを可視化する道具

話し合い自体を活性化し、また効果的にしていくにはどうしたらよいでしょうか。
そのカギは、お互いの考えを可視化することだと考えます。

例えば、模造紙や画用紙やホワイトボード、あるいは付箋紙やメモカードなどを使って、それぞれの考えを書き出してみると、とても効果的です。話し言葉は、話す順に耳に入るそばから消えていきます。ですからお互いの考えを検討し合うためには、脳のワーキングメモリにお互いの話を留めておいて、検討し合う必要があります。そこを補助するために模造紙などに書き出して見えるようにするのです。

模造紙や画用紙、ホワイトボードなどは、ノートなどにまとめた自分の考えをあらためて書き出すというより、頭の中に浮かんだ考えを、まずそれぞれが「どんどん書き出す=書きながら自分の考えを作る」というやり方が効果的です。

画像、授業風景
ホワイトボードを使って、班の考えを整理していく。

グループの中央に模造紙などを置いて、書きやすい場所に書きやすい向きで書き出していくのです。文章で書いてもよいですが、考えのキーワードや短い語句でメモのように書いていくのもありです。これをお互いに見ながら、「これどういう意味?」と質問し合えば、それ自体も話し合いになります。
私の学校では、各学級に学習班の数だけ(8~9)マジックセットを用意しています。そして、国語科では学習班の数プラスαのホワイトボードと黒・赤・青のマーカーのセットを教科備品として用意して使っています。ホワイトボードだと書き直しが楽なので、書きながら考えをまとめるには重宝します。
付箋紙やカードは、KJ法などでもよく用いられますが、書いた後で並べ直したり、グループ化して整理したりするのに便利ですね。並べ直しの操作をしながら気付いていくこともたくさんあるはずです。
さらにA5サイズ程度のカードに自分の考えをメモ書きし、それを見せながら発表し合う「メモカードプレゼン」という方法も効果的で、汎用性が高い方法です。メモを見せながら一巡発表し合った後は、そのメモを学習班の中央に出し合って文字を見ながら、それぞれの考えについて話し合うのです。

「ノートまとめ」……最後は個にもどる

こんなふうに話し合って、学習班の話し合いの成果を発表し合い、そこから全体で討議して……と進んでいくわけですが、話し合いが終わった後、一つ大切なことがあります。
それは「最後は個に戻って考える」ということです。

さきほど、「合意形成」ということを言いましたが、勘違いしてはいけないのは、「合意を形成する」ということは「同じ考えになるということではない」ということです。

学習班での意見交換や議論は、「よりよい考え」を求めて話し合っていくわけですから、話し合った結果、それぞれにとってよりよい考えの形で一つにまとまればそれにこしたことはありません。というか、話し合いは合意の形成を目ざして行います。
「合意形成」とは、一致する部分、納得する部分について「ではこうしよう」「こう考えることにしよう」と確かめ合っていくことです。意見が一致した部分の外側には、一致しない部分、納得しない部分があってよいのです。

その部分を大切にするためにも、話し合った後で、「話し合いのまとめ」「学習のまとめ」、あるいは「話し合って気付いたこと」などの形で、個に立ち返って自分の考えを整理する時間をとることが大切になります。
そうすることで、ノート評価の際に一人ひとりの「個の考え」に対してコメントしてあげることができますし、「合意できた部分」とともに「他の人とは違う個の考え」をお互いに大切にすることにつながると思うからです。

次回は、語彙指導についてご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

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