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9 評価のしかたについて

はじめよう、対話による鑑賞の授業

2015年1月22日 更新

美術における鑑賞を通した言語力育成が求められています。全国各地の学校や美術館で行われる美術鑑賞の授業の形として、先生や学芸員の解説を一方的に聞くのではなく、生徒自身が主体的に発言をし、対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく「対話による鑑賞授業」が注目されてきています。

「対話による鑑賞授業」の評価は、どのようにしたらいいでしょうか

対話による鑑賞授業の評価も他の授業に関する評価と同じです。集団の質に準拠した相対評価ではなく、学習目標に準拠した評価であり、個人が発揮したことやその変容に関する評価を行います。 ここでは中学校第1学年を例に説明します。なお、文章の下線部分は学習指導要領の文言に対応しています。

目標

作品の見方を広げ、多様な作品を見てよさや美しさなどを味わい、 意味や価値をつくり出す鑑賞の能力を育てる (目標(3))とともに、たがいに説明し合あう(内容(1)ア)態度を育てる。

授業に際しては、この目標を参考にして学校の教育課程や題材のねらい等を考え合わせて目標をつくってください。

内容

【関心・意欲・態度】

楽しく鑑賞に取り組み(目標(1))美術に対する関心を高めること。 (内容(1)イ)

【作品の見方】

造形的なよさや美しさ、作者の心情や意図と表現の工夫などを感じ取り、作品の見方や感じ方、考え方を広げること。(内容(1)ア)

【解釈】

表現の仕方や形や色彩などの特徴を基に、(共通(1)イ)様々な視点から 想像を広げたり思考を深めたりして、自分との関係で意味や価値をつくり出すこと。(解説)

【対話】

思いや考えを説明し合うこと。(内容(1)ア)
作品がもたらす感情や見方、解釈の多様性を、対話を通して理解し、自分の見方や解釈を深めること。

授業に際しては、この内容を参考にして学校の教育課程や題材等を考え合わせて内容をつくってください。

このようにして作成した授業の目標と内容から、評価規準を作成するのです。評価の資料としては、(1)授業中の発言内容(学習の状況を具体的に読み取る)、(2)学習カード等の記述(※)(自己評価、学習評価の資料として。また授業中に発言できなかった思いや考え等を知ることができる)、(3)授業を記録したVTR映像(表情や態度から言語化されない関心・意欲を読み取る)などは基本的に必要なものです。多様な観点から評価を試み、先生の印象だけに頼らない、生徒に対して説明のできる評価を心がけたいものです。

※鑑賞の学習カード
学習カード等の記述は自己評価、学習評価の資料として活用します。自分の発言を書く欄を設ければ発言記録の裏付けもできますし、「今日の授業での話し合いをまとめましょう」「話し合いをもとにして今日の絵に題名をつけましょう」という意味の欄を設ければ、どれだけ授業に集中していたかを確かめることもできます。

これは発言のなかった生徒の評価にもいかせます。またそのような生徒を対象に、「授業中に発言できなかったけれど、思っていたことや考えていたことを書きましょう」というような欄を設ければ、発言のなかった生徒の思いも知ることができます。

関連書籍

対話による美術鑑賞の決定版!
『風神雷神はなぜ笑っているのか 対話による鑑賞完全講座』 (上野行一 著)

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