はじめよう、対話による鑑賞の授業
2015年1月22日 更新
美術における鑑賞を通した言語力育成が求められています。全国各地の学校や美術館で行われる美術鑑賞の授業の形として、先生や学芸員の解説を一方的に聞くのではなく、生徒自身が主体的に発言をし、対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく「対話による鑑賞授業」が注目されてきています。
「対話による鑑賞授業」とは、どのようなものですか
対話による鑑賞の授業は、美術作品をよく見てその意味を自分でつくり出す、学習者中心の学習理論(社会的構成主義)に基づいた授業です。一人ひとりが学習に参加し、体験的に学び、共同で知識を構成していく。この学習過程を通して美術作品の理解が深まることはもちろん、問題解決能力や主体的思考力、コミュニケーション能力などの知的能力の育成も期待できます。
授業の様子をみてみましょう
これまでの美術鑑賞の授業といえば、作品についての解説や作家の逸話など美術史的な知識を教える傾向がよく見られました。生徒に感想を書かせたり、意見を聞いたりしたとしても、それをもとに授業をするわけではなく、生徒の感じ方や考え方が授業の中で十分に活用されていたとはいえませんでした。
このことは、中学校学習指導要領美術科の改善の具体的事項である「感じ取ったことや考えたことなどを自分の価値意識をもって批評し合うなどして、自分なりの意味や価値をつくりだしていくことができるように指導の充実を図る」ことと密接に関連しています。さらに中央教育審議会答申においても、「感じ取る力や思考する力を一層豊かに育てるために、自分の思いを語り合ったり、自分の価値意識をもって批評し合ったりするなど、鑑賞の指導を重視する」と示されているように、対話による鑑賞は小学校図画工作科、中学校美術科及び高等学校芸術科(美術)を通じる改善事項でもあります。
意見の交流を通して自己の相対化や他者理解が促される経験は、心の教育や人びとの相互理解が求められる昨今、極めて重要な教育的経験です。生徒は本来、自分の思いをみんなに伝えたい、自分の考えを聞いてもらいたいという願いをもっています。対話による鑑賞は、この願いによりそい、カウンセリングに近い手法で、生徒の発言を促し、対話を進行させていくので、生徒は落ち着いて自分の考えを伝え合い、主体的に学んでいく態度を身につけていくことができます。
対話による美術鑑賞の決定版!
『風神雷神はなぜ笑っているのか 対話による鑑賞完全講座』 (上野行一 著)
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