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質問7 道徳で求められる「評価」って、どんなもの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

評価の意義

教育における評価の意義は二つあります。一つは、児童生徒にとって、自分自身が道徳的成長を実感し、学習意欲の向上につなげていくためのもの、もう一つは、教師にとって、指導計画や授業改善に役立てていくために行うものです。特に、道徳科の評価は、道徳性が人格に関わるものであることを考えたとき、児童生徒の道徳的なよさを認め、励まし、伸ばすためのものであることを念頭に置き、評価していくことが大切です。

道徳科で評価する事柄や評価方法について

学習指導要領には評価する事柄として「学習状況」と「道徳性に係る成長の様子」が示されています。具体的な評価方法としては、1~5などがあります。

  1. 観察法…児童生徒の学校生活の様子を観察することで評価する方法。
  2. 面接法…児童生徒の直接会話、表情や態度、発言内容から評価する方法。
  3. ノートや作文による方法…道徳ノートなどに記述された文章から評価する方法。
  4. ポートフォリオ評価…道徳ノートや作文、役割演技等を収録した映像、プレゼンなどの成果物をもとに評価していく方法。
  5. エピソード評価…児童生徒が道徳性を発達させていく過程で、発言や記述したものをエピソード(挿話)の形で累積していく方法。

評価のしかたについて

道徳科の目標は道徳性の育成です。道徳性は人格の基盤をなすものであり、数字などによる評価は適切ではありません。当然、記述式で評価することになります。それも、児童生徒の道徳的なよさを認めたり、道徳的成長を見取ったりしながら記述していくことになります。そして、他者との比較ではなく、個人内評価をしていくことになります。また、他の教科のように到達すべき目標があって、その目標に到達したか否かを見取っていくことでもありません。あくまでも、個々の児童生徒に注目して、以前よりどれだけ道徳的成長があったかを見取ることになります。

さらに、大くくりなまとまりを踏まえた評価とします。つまり、一時間で指導した内容項目ごとに評価するのではなく、ある程度の期間の中で道徳的成長を見取り評価していくことになります。確かに教師の指導力向上のために一時間一時間の授業評価を行うことは大切なことですが、一時間で児童生徒の道徳性の成長を見取ることはとても難しいことです。よって、ある程度の期間の中(例えば、学期ごとなど)での大くくりなまとまりを踏まえた評価とします。その際の評価の視点としては、多面的・多角的に考えられたかや、道徳的価値を自分との関わりで捉えられているかなどが考えられます。

指導要録と通知表の記述について

指導要録に道徳科の欄が設けられました。この欄には道徳科の授業における学習状況や道徳性に係る成長の様子を記述することになります。したがって、「学校生活全般における道徳教育に関する事柄を書くのではない」ということに留意すべきです。記述のしかたは、一年間の道徳科における学習の様子や道徳的成長を、個人内評価で記述していきます。

指導要録は公簿であるため作成義務がありますが、一方、通知表については法的拘束力がなく、発行も含め記述内容や書式等は学校に任されています。したがって、保護者に対して道徳科での学習の様子をよりわかりやすいものにするために、具体的な内容を加えて伝えることが考えられます。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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