
アクティブ・ラーニングQ&A
2016年2月17日 更新
冨山 哲也 十文字学園女子大学教授
今、関心が高まる「アクティブ・ラーニング」。先生方からの疑問にお答えします。
冨山哲也 (とみやま・てつや)
十文字学園女子大学人間生活学部児童教育学科教授。東京都公立中学校教員、あきる野市教育委員会、多摩教育事務所、東京都教育庁指導部指導主事を経て、平成16年10月から文部科学省教科調査官(国語)、国立教育政策研究所教育課程調査官・学力調査官。平成20年版学習指導要領の作成、全国学力・学習状況調査の問題作成・分析等に携わる。平成27年4月から現職。第1期<絵本専門士>。
第3回 「アクティブ・ラーニングである」といえる授業とは?
Q:「これがアクティブ・ラーニングである」という、特別な授業の進め方がありますか。
A:特定の「型」で捉えるのではなく、先生方による多様な実践が求められています。
アクティブ・ラーニングを、特定の学習形態や授業の進め方として捉えるのは適切ではありません。
例えば、「協働的な学習」という点を実現しようとすると、グループ学習という形態が思い浮かびます。現に、今、小学校・中学校を中心に各教科でグループ学習が広がっているようです。しかし、それらの授業の中には、個人の思考や作業が十分に行われないまま、すぐにグループになって学習が進められてしまったり、交流により考えを深めたりアイデアをまとめたりする過程が淡白で、結論も表層的であったりする様子も散見されます。これでは協働的な学習にならないばかりか、グループにしたことがマイナスになってしまいます。授業の工夫を「型」で(「型」だけで)捉えてしまったことの問題点と言うことができましょう。「型」の有無ではなく、生徒がどのような学習をしているかという姿で、アクティブ・ラーニングを捉える必要があります。
「論点整理」の中でも、アクティブ・ラーニングを特定の「型」として捉えることについては強い懸念を示しています。そこで強調されているのは、先生方自身が「アクティブ」になって授業をつくっていくことへの期待であるように思われます。効果を上げている先進的な事例に改めて学ぶことはもちろん大切ですが、それを「型」として取り入れるのではなく、目の前の生徒に即した実践に生かしていくという考え方が大切です。「型」から授業をつくるのではなく、前述した三つの資質・能力育成のための「視点」をもって、授業づくりをすることが必要になります。
では、その「視点」として、どのようなものが考えられるでしょうか。「論点整理」のP18のi)~iii)から、「視点」となるキーワードを抜き出してみます。
- 問題の発見と解決
- 他者との協働
- 外界との相互作用
- 考えの広がり・深まり
- 対話的な学び
- 見通しをもった取り組み
- 学習活動の振り返りと次へつなげる意識
まずはこの視点で、現在の授業を見てみてはいかがでしょうか。すでに、アクティブ・ラーニングが実現できていることがたくさんあると思います。アクティブ・ラーニングは、ゼロからのスタートではありません。
Illustration: Chiaki Tagami